2019年3月29日金曜日

サントリー美術館「河鍋暁斎展」2


しかし、これからこのような伝統性が美的評価の大きな潮流になるかどうか、成り行きが注目されます――そういえば、最近この手の「ナリチューカイセツ」は、とんと見かけなくなりましたね()

 「僕の一点」はプライベート・コレクションの「鍾馗図」です。端午の節句に立てられる大きなノボリに描かれた朱色の鍾馗さんが、本当の鬼を捕まえているところが、いかにも暁斎的なユーモアを感じさせます。一方、鯉のぼりの鯉は、本当の鯉みたいに、あるいは長崎派の鯉みたいに写実的に描かれています。それは描かれた鍾馗が動き出したという虚構と、飾りの鯉が現実化したという虚構の間で、みごとな共鳴を起こすことになります。

「さすが暁斎先生!!」と掛け声をかけたい気分になりましたが、「僕の一点」に選んだ理由はもう一つあります。

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