2017年10月7日土曜日

小澤優子文化交流サロン4


しかし少なくとも仏教美術において、誕生仏以外に、釈迦幼児時代の姿を独立して造形化する伝統があったかどうか、専門家に訊いてみたいと思っています。あるいは、「過去現在絵因果経」の中のワンシーンを、独立させたような絵画作品がたくさんあるのかもしれませんから、聖なる幼児独立像である稚児大師像が日本独特のイメージであると断言することは憚られます。

しかしそこに、子供純真観や幼児聖性観があった事実は、否定できないように思われます。すぐれた幼児独立像が作られた聖徳太子と弘法大師が、ともに日本の宗教者であることを、僕はとても興味深く感じるのです。

それは『万葉集』に採られる山上憶良の有名な一首「銀も金も玉も何せむに勝れる宝子にしかめやも」に象徴されています。あるいは『梁塵秘抄』の「遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけん、遊ぶ子供の声聞けば、我が身さえこそ動がるれ」を思い起こせば充分でしょう。

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根津美術館「唐絵」6

また島田先生は、「題辞、題詩が単に画図をみた印象、感想を述べるだけでなく、画図の主題と密接な関連があって、 画図の十分な理解のためにはその詩文の解釈が欠かせないとか、題跋の加わることが予期されるというような条件をおくことが必要であろう」と指摘しています。 さらに島田先生は、詩画軸...