2017年10月26日木曜日

サントリー美術館「狩野元信」4


 これらを認めた上でなお、彫像や画像を絶対視しない思想が、日蓮には具わっていたように思われてならない。イコノクラスムは、キリスト・マリア・聖人などをイメージとして表現したり、視覚化してこれを礼拝することに厳しい禁令を出し、それらを破壊する運動である。これは8世紀ごろ、ビザンティン帝国で起こった。

このような思想は、ユダヤ教の影響を受けて、初期キリスト教時代からあったそうだが、当然のことであろう。仏教においても、初期には仏像など存在せず、ガンダーラやマトゥーラで紀元初期に誕生したに過ぎない。薬師寺の仏足石は、その間のイメージがいかなるものであったかを教えてくれるだろう。

8世紀に至って、イコノクラスムが成立する重要な契機として、イスラム教からの差し響きがあったというのは、とても興味深いことではないだろうか。その後、聖像破壊派と聖像肯定派の熾烈な戦いが続いた。

しかし9世紀半ば、聖像肯定派を決定的勝利に導いたのは、皇妃テオドラであり、また一般信徒のうちでは特に婦人たちが聖像肯定派であったという。女性はイメージに弱いのだ。これは我が国の仏教美術を考える際にも、あるヒントを与えてくれるように思われる。

0 件のコメント:

コメントを投稿

根津美術館「唐絵」6

また島田先生は、「題辞、題詩が単に画図をみた印象、感想を述べるだけでなく、画図の主題と密接な関連があって、 画図の十分な理解のためにはその詩文の解釈が欠かせないとか、題跋の加わることが予期されるというような条件をおくことが必要であろう」と指摘しています。 さらに島田先生は、詩画軸...