2017年9月8日金曜日

川喜田半泥子『随筆 泥仏堂日録』4



しかも実にいいのは、半泥子の方から、「一度魯山人に逢いたいと思っている」と、銀座・交詢社前の「中島」のおかみさんに打ち明け、それが実現していることです。偶然二人が出会ったのではありません。

半泥子が北鎌倉を訪ねて行くと、魯山人は打ち水までして待っています。初めて挨拶を交わしますが、半泥子はそれまでサンザン魯山人の悪口を書いたことなど知らん顔をしているし、魯山人はそれをまったく知らないような親しさで接してくれます。二人は十年の知己のごとく、9時間半もしゃべりにしゃべったのでした。「翌日も、其の翌日も、其の日のことを味わうことが嬉しかった」と、半泥子は書いています。すごくいいなぁ!!

二人の見解や趣味がピッタリ合った点として、「作品のよしあしは、技術というよりも、人格の現われだという事」以下、7つばかりが挙げられています。とくに僕がおもしろいと思ったのは、「支那趣味は嫌いという事。尤も山人は以前支那好きで『支那ならば牢屋でもイイと思った事があります』と笑われた」という一条です。

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