②白磁刻花蓮花文輪花形水指は中国・定窯の逸品、北宋から金にかけての制作と推定されています。もともとは深鉢として中華料理を盛り、皇帝の豪華な食卓を飾ったにちがいありません。麻婆豆腐か、青椒肉絲か、はたまた酢豚でしょうか――僕が大好きな家常菜なんか皇帝には出さないような気もしますが……。しかし少なくともデザートの杏仁豆腐なら、この深鉢にピッタリですし、きっと皇帝も喜ぶでしょう!?
いずれにせよ我が国では、これに塗り物の蓋を用意して、茶の湯の水指に使ったらしく、伝えてきた加賀藩前田家でも水指と呼ばれてきました。伝世品であるこの作品以外に、このような使われ方をした定窯磁器があるのでしょうか。もしあるとすれば、近代になって、この水指にならったものにちがいありません。
瓜のような縦筋を入れた優美なフォルムや、内外に加えられた片切り彫りによる蓮花文のおおらかさ、きわめて薄い陶胎を削り出すテクニックなど、非の打ちどころがありません。しかし僕が、もっとも興味を持ったのはその肌の色です。
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