しかし僕の好みをブッチャケにいえば、やはり田沼武能先生の『時代を刻んだ貌』ですね。もっともこれは、僕が程よいバランス感覚をもつ人間であることの反映かもしれませんが……(笑)
それはともかく、田沼先生と土門拳の違いを写真よりもっと端的に教えてくれるのは文章の方です。両者とも、一人ひとりに取材ノートを添えています。土門拳はほとんど自分を、あるいは自分との関係を語っていますが、田沼先生は対象を語り、ときどきチョット自分の感想を加える程度にとどめています。
1997年にブリュッケより出版され、その後新版も出された単行本がちくま学芸文庫に収められました。長文の文庫版自著解説「『ジャポニスム』は理解されてきたか?」を加筆している点に、真摯な研究者である馬淵明子さんが象徴されています。拙著『北斎と葛飾派』<至文堂版日本の美術>に...
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