2022年3月18日金曜日

菅原真弓『月岡芳年伝』5

 

芳年芸術最大の魅力――それはこのような二面性にありました。たとえば、これから問題にしようとしている芳年の歴史画について、菅原さんは「大日本名将鑑」を取り上げ、「洋風表現への顕著な志向と復古的な主題という矛盾」があると述べています。

しかしこれは矛盾というよりも、芳年芸術の美しき二面性だというのが独断と偏見です。あるいは、「美は矛盾のうちに宿る」と言い換えてもよいでしょう。かつて吉澤忠先生が、渡辺崋山において証明したように……。

菅原真弓さんが美術史学会会誌『美術史』の141冊に、「月岡芳年歴史画考」を発表したのは1996年のことでした。

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