2021年8月10日火曜日

サントリー美術館「ざわつく日本美術」4

 

その陶淵明には、「閑情の賦 并びに序」という有名な賦が伝えられています。賦というのは、多く対句を用いつつ事物を説明し感じるところを述べ、句の最後に韻をふむ詩のような文章、あるいは文章のような詩のことです。もちろん岩波文庫版『陶淵明全集』に収められていますから、その解説をそのまま掲げておくことにしましょう。

「閑」は防ぎ止める意で、情欲の放逸に流れるのを抑制すべきだというのがこの賦の主旨である。この一篇は古来評価が極端に分かれている。淵明の最も早い推賞者の一人である六朝梁の照明太子(蕭統)は、この一篇は淵明集の中の白壁の微瑕だ、百を勧めて一を諷した者で、ついに諷諫がない、これは集中にない方がよいとさえいう。後世の論者の多くはこれに付和して、全く軽薄淫褻な作品で最も子弟を誤らせるものだと言う。


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