2021年2月18日木曜日

『國華』蕪村拙稿5

ここで大変興味深いのは、燕京(北京)八景の一つに「西山積雪」があることですが、蕪村がこれを実際に見ることはもちろんかないませんでした。李攀龍の詩から霊感を得て、雪が降り積む中国の山並みを、北京の家並みを描こうとしても、具体的なイメージは慣れ親しんだ日本から、住み慣れた京都から選ばざるをえません。こうして「夜色楼台図」は中国と日本のダブルイメージとなったのです。

それは峨眉山と妙義山が蕪村の視覚のなかで、同じ山として認識されたのとまったく同じではありませんか。「峨嵋露頂図巻」と軌を一にして、「夜色楼台図」は中国でもありまた日本でもあったことになります。李攀龍の詩が発見されたことによって、この作品の中国的心象は強まりましたが、それはまた逆に日本の京都を際立たせ、重層的な作品構造を具体的に考察する道を開いてくれたともいえると思います。

 

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