2020年10月20日火曜日

葛飾北斎『万物絵本大全図』大英博物館蔵9

先にあげた京都御所常御殿の鶴沢探真筆障壁画は、この儀狄が禹王に酒を献上する場面を描くものだったのです。いや、待てよ、かつて読んだ中村喬編訳『中国の酒書』(東洋文庫528)にも何か書いてあったなぁと思い、これまた書庫から引っ張り出してくると、やはりありました。

『中国の酒書』は北宋時代の酒書である朱肱[しゅこう]の『北山酒経』と、竇苹[とうひょう]の『酒譜』に中村さんが訳注をつけた東洋文庫の1冊ですが、両書とも酒の起源から説き起こしているのです。

しかし愉快なのは、『酒譜』が儀狄説をふくむ3つの起源説をあげた上で、論拠を示しながらすべて否定していることです。それでは、酒はいったい誰からはじまったのでしょうか? 竇苹の答は、「最初にはじめたのが誰かなど、わかるはずがない」(!?)

0 件のコメント:

コメントを投稿

山種美術館「桜さくらSAKURA2025」7

今回は奥村土牛の傑作「醍醐」がポスターのメインイメージに選ばれ、目玉にもなっているので、とくに土牛芸術に力を入れてしゃべりました。もちろん大好きな画家でもあるからです。 遅咲きの画家といわれる土牛は、一歩一歩着実に独自の土牛様式を創り上げていきました。人の真似できない真なる創造的...