2019年4月9日火曜日

小林古径が小倉遊亀へ5


僕がそう考えるのは、遊亀が古径をとても尊敬していたからです。遊亀が直接就いたのは安田靫彦でしたが、それにも増して強い憧憬を感じていたのは古径でした。周知の事実です。

遊亀は自分の作品が、仰ぎ見るような古径の作品として通っていることに、一種の誇りを感じていたのではないでしょうか。もし事実を発表すれば、みずからの秘かな喜びを失うとともに、古径を傷つけることにもなりかねません。

もう一つ考えられる理由は、遊亀がその美術商を知っていた可能性です。もしそれを公表したりすれば、無用な混乱を起こすことになるでしょう。この点を重視すれば、古径も遊亀作品が自作になっていることを知っていたけれども、同じ理由で黙していたということになります。

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