2018年2月23日金曜日

横浜美術館「石内都展」と山口百恵3


そもそも、そのころ僕は写真というものに興味がありませんでした。近現代美術史において、写真がきわめて重要な位置を占めていることを認識するようになったのは、もうちょっとあとのことでした。やがて何かの機会に知った、スーザン・ソンダクの「今日、あらゆるものは写真になるために存在する」という名言――「インスタ映え」を的中させた名言も、まだ僕の言語記憶中枢に収まっていませんでした。

しかも最初は、高橋由一や浅井忠、竹内栖鳳のような近代の画家が、写真を利用して作品をこしらえたという事実に興味をもったのです。つまり、写真そのものではありませんでした。山口百恵を哀しませたことはもとより、この写真集にまったく関心が向かなかったのも、当然だったのです。

『絶唱、横須賀ストーリー』と写真家・石内都の名前が結びついたのは、その発表から4半世紀も経ってからでした。郷里である秋田の県立近代美術館の仕事を正式にやるようになる2年前から、アドバイザーというような立場になりました。そこで、美術館でやってみたい特別展をいろいろと考えることにしたのですが、そのうちの一つに「木村伊兵衛展」がありました。

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