2017年12月9日土曜日

国立西洋美術館「北斎とジャポニスム」2



それにも拘わらず彼が北斎画をアメリカで画学の教科書としたのは、色彩の一標本としただけで、彼の嗜好の広重に在ったことは、アメリカで彼が開いた浮世絵展覧会の解説書によって極めて明白である。西洋人でもフェノロサのような趣味の高い人のあることは心強い。この人が明治11年に日本に来て、日本古代美術の世界に冠たるを賞揚し、併せて後継者として岡倉天心を育てたことも、その趣味のよさを知って、よかったよかったと始めて安心がつく。

 これは「趣味について」という章の一節です。「趣味嗜好は先天的なもので後天的な学問知識のどうすることもできない領域である」「人の趣味のよしあしは持って生まれた宿命で、どうすることもできない」という持論の証明として、北斎と広重が持ち出されている箇所です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

根津美術館「唐絵」5

とくに応永年間、熱狂的 に愛好されたので、応永詩画軸 などと呼ばれることもあります。 詩画軸のことを勉強するときには、必ず『禅林画賛   中世水墨画を読む』 ( 毎日新聞社 ) という本を手元に置かなければなりません。そして監修者である島田修二郎先生の論文「室町時代の詩画軸につい...