2017年8月26日土曜日

赤須孝之『伊藤若冲製動植綵絵研究』2



 美術史研究者の書く論文には結論というものがありません(!?) 知らない間に始まって、知らない間に終わるズルズル・スタイルになっています。「おわりに」とあるので結論かなと思って読んでみると、時間切れで尻切れトンボになってしまった言い訳や、これからさらにやりたい夢みたいなことがルル述べてあって、「すべては後考に俟ちたい」などとハシゴを外される羽目になるのです。

これらは清水幾太郎先生が、名著『論文の書き方』で厳に戒めているところだったような気がしますが……。

もっとも最近は、美術史でも最初に内容の要約とキーワードをならべ、最後に結論を掲げる論文も増えてきました。若い研究者が紀要や学会誌に書く論文は、すべてこのスタイルになっていると言ってよいでしょう。しかしこれも元をたどれば、似非科学ともいうべき人文科学の論文も、本当の科学の論文の体裁にならうべしという、文部科学省の指導によるところのような気がします。

少なくとも僕は、ズルズル・スタイルです。若いころは、正しいスタイルで書いたこともありますが、もうこのごろはズルズル・スタイルのどこが悪い!!と居直っています。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

根津美術館「唐絵」5

とくに応永年間、熱狂的 に愛好されたので、応永詩画軸 などと呼ばれることもあります。 詩画軸のことを勉強するときには、必ず『禅林画賛   中世水墨画を読む』 ( 毎日新聞社 ) という本を手元に置かなければなりません。そして監修者である島田修二郎先生の論文「室町時代の詩画軸につい...