前回でオチをつけ、曼荼羅暴論はこれで終りにするつもりでしたが、その後、とても重要な発表を聞く機会がありました。5月12日行なわれた鹿島美術財団賞受賞記念講演です。今年も二人の研究者が選ばれました。日本東洋部門は、和歌山県教育庁の三本周作さんで、「愛知・瀧山寺伝来の鎌倉時代初期慶派作例に関する調査研究」という発表が行われました。
瀧山寺は、名古屋大学時代、岡崎市文化財調査のときにおもむいたことがある真言宗のお寺です。ここには運慶の聖観音・梵天・帝釈天三尊像が伝えられているのですが、その造像背景を鎌倉幕府の王権志向から――ぶっちゃけていえば王権利用から読み解こうとしたとても刺激的な発表でした。
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