2024年5月11日土曜日

皇居三の丸尚蔵館「近世の御所を飾った品々」8

 

一品に叙せられた智仁親王にピッタリの画題ではありませんか。しかし松は描かれていても、丹頂鶴がいないじゃないかって? それがチャンと暗示されているんです。というのは「一品当朝」という謎語画題もあるからです。これまた『東洋画題綜覧』によると、いま述べたごとく一品は鶴ですが、「朝」は朝廷の朝にして「潮」に通じ、海辺の波を描く画題とあります。

鶴は番つがいで複数描かれることもありますが、必ず波とセットになるところがミソです。これは一品の官に昇って、朝廷に出頭する栄誉を祝した画題だというのです。大きく広がる青海波のような銀波のコノテーションが、「潮」を通して朝廷になるんです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館「物、ものを呼ぶ」19

  もっともヤバイ !! と思ったのは、右隻の浅草寺参道あたりに描かれる三十三間堂の建築年代です。完成したのは寛永 20 年( 1643 )、家光の命を受けて 4 月に射初めの儀式が執り行われたというのです。 となると、この「江戸名所図屏風」が制作されたのは、寛永 20 年以...