僕も「黄粱一炊図」(個人蔵)を取り上げて、そこに現実社会との絆を断ち切られ、葛藤から諦観へと向かわざるを得なくなっていた、崋山の空虚寂寥たる心象の反映を読み取ったことがありました。決して長くなかった一生に対する感慨を込めた墓標だった――なんて気取ったことを臆面もなく活字にしています。
最初に出版された崋山のすぐれた作品図録として、崋山会が編集した『渡辺崋山遺墨帖』(審美書院 1911年)があります。もちろん日比野さんも言及されています。昭和50年(1975)、田中一松先生はこの複製本を歴史図書社から出版されましたが、その解説を僕に書かせてくれたんです。
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