2017年6月28日水曜日

静嘉堂「曜変天目」4


それだけではありません。中国には虹をよくないものと見なす思想があったのです。聞一多の『中国神話』(東洋文庫497)をひもとくと、「虹と美人」という項があります。

それによると、漢代以来、虹は陰陽二気の交接の象徴、邪淫のシンボルと考えられていたそうです。現在でいえば、エッチとか不倫ということになります!?

しかも漢代の『京房易伝』という本には、「妻 夫をしのげば則ち之れを見る。陰 陽に勝るの表れなり」とあるそうです。「メンドリ歌えば家滅ぶ」「メンドリ勧めてオンドリ時を作る」と似たような男尊女卑の思想ですが、それが美しい虹と結びつけられている点に興味つきないものがあります。

さらに虹は陰奔なる美人、つまりセクシーな妖婦や毒婦にたとえられ、漢儒たちは虹蜺異災論をとなえるときにその根拠としたのでした。ちなみに「虹」は雄のニジ、「蜺」は雌のニジです。聞一多はこのような思想が、『詩経』にまでさかのぼることを指摘しています。

またある百科事典によれば、古代中国では虹を不吉な現象とし、決して指差してはならぬとしていたそうです。そもそも虹も蜺も虫偏であるのは、気味の悪いものと見なされていたことを暗示しています。

本来「虫」は蛇のマムシを指す漢字だったと、『諸橋大漢和辞典』には書いてあります。また「虹」に「乱す」「乱れる」という意味があるのも興味深く感じられます。

0 件のコメント:

コメントを投稿

山種美術館「桜さくらSAKURA2025」7

今回は奥村土牛の傑作「醍醐」がポスターのメインイメージに選ばれ、目玉にもなっているので、とくに土牛芸術に力を入れてしゃべりました。もちろん大好きな画家でもあるからです。 遅咲きの画家といわれる土牛は、一歩一歩着実に独自の土牛様式を創り上げていきました。人の真似できない真なる創造的...