2017年6月20日火曜日

静嘉堂文庫美術館「珠玉の香合・香炉展」4


この仏教と結びついたお香が古代の日本へ入ってきました。それは平安時代後期、王朝文化全盛のころに遊戯化され、僕的にいえばヒューマニズム化されました。室町時代に入ると、茶道、華道、能謡曲とともに香道が成立しましたが、もうこれは日本独自の文化であると誇ってもよいほど、ジャパナイズされた芸道となっていました。

やがて桃山時代になると、千利休により侘び茶が完成され、茶室に炉を切り、湯を沸かして茶を立てるという――お茶人には怒られそうですが――お座敷天ぷらのようなお茶が風靡します。その際生まれたのが炭手前で、そのとき用いられるお道具が炭道具ですが、当然のことながら香炉は脇役に追いやられ、香合の地位がアップすることになります。炭道具の中で、華やかにして可愛い香合は人々から深く愛され、やがて香合には特別のステータスが与えられるようになります。

だからこそ、炭手前を省略する大寄せの茶会などでは、その象徴として香合のみを床や書院に飾ることが行われるようになったのでしょう。日本人の美意識を考える際、とても興味深く感じられる現象です。あんなちっぽけなアイテムが、あれほどまでに愛おしまれ、炭道具すべてのシンボルとして機能しているからです。

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