2024年9月13日金曜日

出光美術館「物、ものを呼ぶ」3

 「僕の一点」は伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」ですね。タテ168㎝、ヨコ374㎝という巨大な方眼紙を思い浮かべてください。一つの方眼はほぼ1㎝で、全部で42800個あるそうです。これが「鳥獣花木図屏風」一隻の方眼数です。つまり両隻合わせて一双にすると85600個ですよ。

それを一つ一つ丁寧に顔料で塗っているんです。それもただ塗るんじゃなくて、主要モチーフを含め、ほとんどの部分を「回」の字みたいに二つの色相で塗り分けているんです。気の遠くなるような作業です。若冲は自閉スペクトラムとかアスペルガー症候群という発達特性をもっていたという説がありますが、それと結び付けたいような誘惑に駆られます。

このような若冲の描き方は「升目描ますめがき」と名づけられています。おのずから画箋紙上に現れる、薄墨の境界線を生かした若冲の水墨画は「筋目描すじめがき」と呼ばれていますが、それと一対をなす若冲の独創的手法です。

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