2024年8月18日日曜日

すみだ北斎美術館「北斎グレートウェーブ・インパクト」9

出口さんは「個というのは類の対立項というより、むしろ類の極限的な一形態なのである」というのです。これにしたがえば、北斎は江戸後期浮世絵師の極限的な一形態ということになります。これも一面の真理を突いているように思ったので、「伝統と革新」の章に引用させてもらうことにしました。

柄谷さんの固有名論からみれば、北斎は時代を超越した天才となり、出口さんの個類論にしたがえば、北斎は時代が生んだ天才ということになるのではないでしょうか。北斎にこの両面があったことは否定できない事実で、どちらかに決めなければならない二者択一の問題ではないと思います。

今年の春、出口さんは『朝日新聞』の「耕論 『自分の名前』とは」に登場されました。ずっと偽名で生きてきて、死の直前に本名を明かしたある犯人について、示唆的な分析をされていましたが、いよいよ元気で活躍されていることを知りました。そして30年前を思い出し、何か懐かしいような感覚にとらわれました。

 

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