さて、うすにごりの清酒をしぼったあとには酒糟ができるわけですが、山上憶良の「貧窮問答歌」(『万葉集』巻5)には「糟湯酒かすゆざけ」なる酒が登場します。これまた『日本の酒』によると、その酒糟を湯でとかしたもので、塩をさかなに飲んだそうです。きわめてチープな酒にして、だからこそ「貧窮問答歌」に歌われることになったのでしょう。
上島鬼貫うえじまおにつらの「賤しずの女めや袋洗ひの水の汁」は、江戸時代、伊丹で新酒をしぼった袋を洗った水を、近所の女房たちがもらって帰り、亭主に飲ませたことを詠んだものだそうです。もちろんこれも「賤の女」の話ですが、やはり江戸時代は貧しかったのでしょう。いや、江戸時代はモノを大切にしていたというべきでしょうか。
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