2024年1月15日月曜日

日比野秀男『渡辺崋山』13

 

鵜がようやく水中で鮎を一匹捕まえて、水面に浮かび上がった瞬間で、柳の枝には翡翠が止まっています。ただ止まっているのではありません。鵜がくわえた魚を狙っているのです。翡翠という外国が、日本という鵜の持ち物を狙っているのです。

 僕が鵜を日本の象徴と見なすのは、『古事記』に伝えられる鵜草葺不合命うがやふきあえずのみことのことを思い出すからです。鵜草葺不合命は鵜の羽で葺く産屋でお生まれになりましたが、この神様と玉依比売たまよりひめの間に生まれたのが、初代天皇とされる神武なのです。狩野探幽の筆になる有名な掛幅があり、東京国立博物館に所蔵されています。


0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』2

 本邦初の辞典がここに誕生したんです。しかも日本語のあとに、すぐれた英訳がついているから便利です。便利なだけじゃ~ありません。日本語と英語における視覚文化へのアプローチが意外に異なっていることが浮彫りになり、おのずとわが国視覚文化の特質といった問題へ導かれることになります。この質...