2022年8月31日水曜日

富士山世界遺産センター「与謝野晶子と富士山」3

 「僕の一点」は、あまりにも有名な晶子の第一歌集『みだれ髪』の初版本です。晶子は明治11年(1878)、堺県堺区――現在の大阪府堺市で菓子商「駿河屋」を営む鳳宗七夫妻の子に生まれました。この「与謝野寛・晶子と富士山、静岡の文学」展を予見したような屋号じゃ~ありませんか()

生地にある堺市博物館では、晶子関係の資料をたくさんコレクションしています。『みだれ髪』初版本はそのうちの1点、藤島武二による装丁美術の傑作ですから、図版ではお馴染みですが、オリジナルを見たのは初めてのような気がします。



2022年8月30日火曜日

富士山世界遺産センター「与謝野晶子と富士山」2

 

 文学的志向を同じくする与謝野夫妻は、終生互いの人生や文学活動に深い影響を与え続け、国の内外を問わず連れ立って多くのたびに出向いています。温泉を愛した二人は、熱海や伊東、一碧湖など伊豆に足しげく通い、山梨県も含めた富士山の周辺にも出かけ、富士山や静岡に関わる多くの短歌や文学作品を残しています。

 2022年は晶子の没後80年にあたることにちなみ、世界遺産センター初の文学展示として、自筆資料や歌集、関連資料のパネル解説などにより、与謝野夫妻の文学や静岡での旅、富士山に対する思いなどを紹介します。

 


2022年8月29日月曜日

富士山世界遺産センター「与謝野晶子と富士山」1

静岡県富士山世界遺産センター「与謝野晶子没後80年 与謝野寛・晶子と富士山、静岡の文学」<94日まで>

 2年前、静岡県富士山世界遺産センターで「谷文晁×富士山 山を愛した時代の寵児」という特別展が開かれました。求められるままカタログ・エッセーを寄稿し、口演を行なったことは、そのときアップしたように思います。

その静岡県富士山世界遺産センターで、特別展「与謝野晶子没後80年 与謝野寛・晶子と富士山、静岡の文学」が開催されています。もちろん饒舌館長も晶子の大ファン、担当した田代一葉さんの解説を聞きながら、心ゆくまで堪能したことでした。「鑑賞ガイド」の一節を引用しておきましょう。

 

2022年8月28日日曜日

夏休みと賛酒詩15

 

翌朝、泊まっていた東急インのスリッパを借り()、タクシーを呼んで城東病院に向かったことが、昨日のことのように思い出されます。続いて開催された米国クラーク・コレクション国際シンポジウムに参加はできたものの、ドクターストップのせいで、ナパヴァレー・ワインの絶品を一滴も飲めなかったことが痛恨の極みでした。

今回、あのときのような激痛は免れましたが、毎日1錠のフェブキソスタットを倍にし、夏休みの後半はオールフリーで我慢したことでした。しかしアルコール・プリン体・糖質を全部抜いちゃうと、ビールもこんなに不味くなるものなんですね。いや、ビールじゃ~なくなるんです()


2022年8月27日土曜日

夏休みと賛酒詩14

河野水軍がウソか本当か分かりませんが、そんなことはどうでもよく、是非参加して、天下の名湯・道後温泉に一度浸かってみたかったんです。

しかし常任委員会のあと、飲み会で愛媛の銘酒「梅錦」をガンガンやったのが――つまり「美術品は所蔵館で、地酒はその土地で」を実践したのが悪かったらしく、その夜中、激痛に見舞われました。

「梅錦」は愛媛の川之江、現在は四国中央市という名前になっている土地の銘酒です。もちろん今や全国区ですが、やはり「川之江の梅錦」の方が、「四国中央市の梅錦」よりゼッタイ酔いなぁ()

 

2022年8月26日金曜日

夏休みと賛酒詩13

 

 暑いのでビール、〆は冷酒といった調子で戯訳遊びをやっていたら、シシ食った報いで痛風が再発してしまいました。一回目は忘れもしない1999年初夏のことでした。この年は美術史学会の全国大会が、愛媛大学で行なわれました。このごろは会費を払うだけの幽霊会員ですが、そのころは必ず全国大会に参加していました。そもそも常任委員でしたから、参加せざるを得なかったんです。

というよりも、愛媛の松山は我が河野家発祥の地です。有名な河野水軍――ありていに言えば海賊なのですが――この水軍が祖先であると、よくオジイチャンから聞かされていました。


2022年8月25日木曜日

夏休みと賛酒詩12

 


 だれも真似することができない天下の傑作戯訳ですが、ここでオメオメと引き下がったんじゃ~饒舌館長の名折れです( ´艸`) 足元にも及ばないことはよく分かっていますが、天上の井伏鱒二先生、拙訳アップをお許しください。

 晩唐・于武陵「酒を勧む」

  ガンガンやろうぜ老朋友ラオポンヨウ 金で作った小ジョッキ

  こぼれる程にそそいだが 遠慮なんかはするじゃない

  花が開けば風が吹き 雨降ることもしばしばだ

  人間だっておんなじで サヨナラだけが人生だ

   ヤジ「結局最後は井伏鱒二になっちゃってるじゃないか!!

2022年8月24日水曜日

夏休みと賛酒詩11

 


 串田久治・諸田龍美著『漢詩酔談』の〆は、もちろん晩唐・于武陵の「酒を勧む」です。この絶唱とくれば井伏鱒二ですね。だれも真似することができない、天下の傑作戯訳です。

 コノサカヅキヲ受ケテクレ

 ドウゾナミナミツガシテオクレ

 ハナニアラシノタトヘモアルゾ

 サヨナラダケガ人生ダ

2022年8月23日火曜日

夏休みと賛酒詩10

 

明・石濤「友人と夜飲す」(続)

 何を隠そうこの俺は 摩詰まきつ王維の再来だ

 だから必ず酔ったとき 自然の天真 現われる

 斉帝せいてい選んだ三千人 君こそ中の一人なり

 颯爽としてイケメンで 生気溌剌 好男子

 我が愛用のチビ筆を 取り君を見て大笑し

 たちまち立って舞うように 描き終わると絶叫す

 雄叫びみたいな一声で さらにひろがる天空ぞ!!

 ゆえに輝く満月も 小さく見えます中空なかぞら


2022年8月22日月曜日

夏休みと賛酒詩9

 


明・石濤「友人と夜飲す」

 敬亭山の広教寺 かつて会いしを思い出す

 君の話は自由無碍 騶衍すうえんみたいな舌をもつ

 今は白髪しらがで二人とも 翁おきなになってしまったし

 周りを見ても人気ひとけなく 冷たきことは鉄に似る

 菊の花咲くくさむらで 手を取り合って大笑い

 書画を勝手に観ていると 海も大河も空くうに帰す

 灯火とうかの光は闇をつき 白昼みたいに輝いて

 酒の香りは真っ直ぐに 兜率とそつの天宮へと届く

2022年8月21日日曜日

夏休みと賛酒詩8

 


 みんな素晴らしい賛酒詩ですが、やはり文人画家にも加わってほしいので、入矢義高先生の『中国文人詩選』(中公文庫)から、大好きな倪雲林と石濤の賛酒詩を1首ずつアップすることにしましょう。両方とも秋の賛酒詩ですが、白玉の歯に染みとおる秋の夜はもう間近です。

元・倪雲林「九日」

 重陽!! 黙っているわけにゃ いくまい――心が動き出す

 壷の濁酒どぶろくやりながら 悠然と見る西山を

 美しい木々 秋風に 揺れるを遠くにいとおしみ

 静かに見てる雁金かりがねが 夕日を浴びて飛び去るを

 ものさびしいなぁ!!草や木々 雲の碧あおさが目に沁みる

 果てなく広がる大自然 鳥はねぐらに帰ってく

 淵明ごとき人は誰? 粗末な身なりで吟じつつ

道をゆったり歩いてく その様おのずと長閑のどかなり


2022年8月20日土曜日

夏休みと賛酒詩7

 

明・王世貞「暑を山園に避く」

 飲みかけの酒 手に持って 水辺の東屋あずまやまで来たが

 ひどい暑さはおんなじで たちまち酔いも醒めにけり

しかし嬉しや!! 得も言えず 梢を渡る風 止むと

霧雨 降りだし池の面に 星のまたたき映ってる


2022年8月19日金曜日

夏休みと賛酒詩6

 

北宋・蘇舜欽「暑中閑詠」

 フルーツゆらゆら水の中 生酔いなまよいの俺ソックリだ

 枕辺の本 乱雑に 散らばってるけど「まぁいいや!!

 北の窓辺に竹林が 吹く涼風に揺れている

 青空 流れる白い雲 寝ながらぼんやり眺めてた


2022年8月18日木曜日

夏休みと賛酒詩5

 

 串田久治・諸田龍美著『漢詩酔談』の第4章は「漢詩歳時記」――そのなかから、夏にちなんで6月、7月、8月の3首を紹介することにしましょう。6月は憧れてやまない酒仙詩人・陶淵明の「連雨独飲」です。

東晋・陶淵明「連雨独飲」

 命はいつか尽きるもの 言われてきました昔から

 仙人――この世にいたはずだ だが今いったいどこにいる?

 古老が俺に酒をくれ 「飲めばなれます仙人に……」

 一杯→忘我 もう数杯 天をも忘れる心地なり

 すなわちこれが仙界だ!! 自然に任せて悠然と……

 仙鶴 不思議な翼もち 宇宙も瞬時に往還す

 これを自分の理想とし 励み努めて四十年

 体はすでに老いたけど 心は健在 御の字だ!!


2022年8月17日水曜日

夏休みと賛酒詩4

 


唐・白楽天「卯時の酒」(続)

 しかし醒めると我が思い ちぢに乱れて処しがたし

 出世や左遷に憂喜して ビクビクしながら二十年

 去年 宮廷職を辞し 今年は辞めた地方官

 泉に帰る魚うおや殻 脱ぐ蝉のごと去っていこう

 是と非を分けず成り行きで 行くも止まるも思うまま

 青雲……なんてナンセンス!!  浩然の気を胸中に……

 胸に手をあて独りごつ 誰も分からぬ独り言

 今日まで生きた五十年 こんな安らぎ初めてだ!!

 加えてこの杯はい満たす酒 いつでもあるんだ目の前に

2022年8月16日火曜日

夏休みと賛酒詩3

 

唐・白楽天「卯時の酒」

 仏がほめる醍醐ヨーグルト 仙人たたえる夜の露

 だが卯酒ぼうしゅにはかなうまい 効き目は倍で速く効く

 まず手のひらに一杯目 三口で飲み干しゃ胃の腑へと

 春暖 腸を貫いて 背中に太陽 差すようだ

 五体くつろぐだけじゃなく 士気も盛んに高まって

 即座に忘我の境となり 終日 仕事も忘れちゃう

 かのユートピアに遊ぶよう 原始の世界へ戻るよう

 我が天性は満たされて 俗世の思慮など砕け散る


2022年8月15日月曜日

夏休みと賛酒詩2

賛酒詩の「賛酒」はマイ造語です。以前「お酒をほめる和歌」をアップしたとき、大伴旅人から元号を採るなら、「令和」なんかより「賛酒」にすべきだという持論を述べました。今年は賛酒4年ーー素晴らしいじゃ~ありませんか!!( ´艸`) 元号には不向きだとしても、「賛酒詩」なら問題ないでしょう。青木正児先生は「飲酒詩」とおっしゃっていますが、「賛酒詩」の方がまさるかな( ´艸`)

軟弱な僕は昼酒でしたが、賛酒詩といえば、やはり「卯酒ぼうしゅ」ですね。卯の刻、つまり朝6時ごろからやるお酒です。『漢詩酔談』には、白楽天の「卯時の酒」が選ばれています。この詩を詠んだとき、白楽天は55歳だったそうですが、今の僕からみると4半世紀も前にこの悟り!!――さすが白楽天だと感を深くします。

 ヤジ「天下の白楽天をオマエと比べたりするな!!

 

2022年8月14日日曜日

夏休みと賛酒詩1

 


 いよいよ夏休みです!! 今年も大好きな漢詩に戯訳をほどこし、楽しみながら過ごすことにしました。チョット昼酒をやっているうちに、漢詩は漢詩でも、今回は賛酒詩でいこうということになり、串田久治さんと諸田龍美さんの『漢詩酔談』(大修館書店 2015年)を本棚から引っ張り出してきました。

青木正児先生の『中華飲酒詩選』(筑摩叢書)や、沓掛良彦さんの『壷中天酔歩』(大修館書店)の方が少しアカデミックかもしれませんが、チビチビやるにはちょっとアルコール度が高すぎるような感じがしたものですから……。

2022年8月13日土曜日

出光美術館「板谷波山」7

 


この生誕150年記念出光波山展をエントリーし始めたら、あるFBフレンドが、田端駅前に「田端文士村記念館」という施設があって、特別展「写真が語る素顔の板谷波山」が行なわれていたということを知らせてくれました。5月で終ってしまったようですが、常陳もあるようです。BA5と炎暑が収まったら、一度お訪ねしたいと思います。

生誕150年記念出光波山展には、刷毛三島と焼締めの「飛鳥山焼杯」が出ていますが、いつかこれで熱燗を一杯やってみたいなぁ――もちろん、ヒヤや吉田類さんが好きなヌル燗も悪くありません!!

 ヤジ「結局オマエの趣味も、芸術家より陶工としての波山にいっちゃってるじゃないか!!

2022年8月12日金曜日

出光美術館「板谷波山」6

 


「僕の一点」はポスターにも選ばれた「葆光彩磁花卉文花瓶」ですね。波山とは深いえにしに結ばれている出光美術館が誇るコレクションの名品です。しかし、もし一つ頂戴できるとしたらこの作品ではなく、「飛鳥山焼の盃」ですね() 

明治36年、波山は田端に窯を築き作陶に挑み始めました。はじめは「作品」が売れるはずもなく、このような酒器を焼き、飛鳥山の花見客に売って生計を立てていたそうです。かつて榎木孝明が波山を、南果歩が妻のまるを演じた映画「HAZAN」を見ましたが、この飛鳥山焼のシーンを忘れることができません。

2022年8月11日木曜日

出光美術館「板谷波山」5

 


それにもかかわらず、波山がテレビのプロレス中継を好み、とくに力道山の大ファンであったというのは、じつにおもしろいじゃ~ありませんか。ウィキペディアで知った情報ですが、本当のことだったのでしょう。もちろん僕も、力道山が大好きでした。もっとも、あのころ力道山が嫌いな子どもなんていませんでしたが……。

葆光に象徴されるおだやかな性格、キラキラと輝くまぶしい光を厭う美意識をもつ波山でしたが、その胸中には、あの力道山が爆発させるエネルギーと木霊こだまする強烈なデーモン、激情を掻き立てる鬼神が棲んでいたのかもしれません。

2022年8月10日水曜日

出光美術館「板谷波山」4

 


もちろん波山も知っていたでしょう。光を隠すとか、かすかな光という意味です。不思議なことに、波山においては近代的美術教育やアール・ヌーボーと荘子が結び付いちゃっているんです(!?) 

かつて蕪村の微光感覚を巡る一文を書いた時や、出光美術館で抱一の光の感覚についてしゃべった際に、これをキーワードに選んだものでした。江戸時代の画家なら、不思議でもなんでもないんですが……。

葆光とは波山の美意識であり、人柄でもあったように感じられてなりません。

2022年8月9日火曜日

出光美術館「板谷波山」3

 


このような世代の差を認めた上でなお、波山が明治22年、開校したばかりの東京美術学校、現在の東京藝術大学に入学したことは、芸術家波山を生む決定的ポイントになったように思います。

言うまでもなく、東京美術学校校長は理想主義者の岡倉天心でした。しかも波山の選んだ科が美術工芸科ではなく、彫刻科であった点に興味尽きないものがあります。最初、波山は彫刻家になろうとしたんです‼

 波山といえば葆光彩ですが、僕は「葆光」という言葉が、『荘子』に出ることをとても興味深く感じるんです。

2022年8月8日月曜日

出光美術館「板谷波山」2

両方の作品を実見して、僕はとてもおもしろいと思いました。香山は革新的な意匠や高浮彫りという新しい技法を使いながら、どこか伝統的な陶工の匂いがするのに対し、波山にはそれがまったくなく、とてもモダンなんです。波山は近代的な芸術家であったのです。

香山は天保13年(1842)、波山は明治5年(1872)の生まれです。ちょうど一世代ちがうことになりますから、この年代差を考えなければなりません。香山に少し遅れて生まれた三代清風与平と、竹本隼太を加えて、明治の三代名工と呼ばれていますが、みな伝統的陶工の匂いをもっているからです。

 

2022年8月7日日曜日

出光美術館「板谷波山」1

 

出光美術館「生誕150年 板谷波山」<821日まで>

 板谷波山――尊敬してやまない近代の陶芸家です。作品がきわめて個性的であり、一見して波山だ!!とすぐわかります。波山はファインアートとしての陶磁器を完成させた近代的芸術家であり、陶工ではありませんでした。伝統的な技法を継承する技術者ではなく、新しい美を創造する芸術家であるという矜持から、重要無形文化財保持者、つまり人間国宝としての指定を断ったそうです。波山の立ち位置をよく現わしているではありませんか。

僕が文化財保護審議委員をやっていた2002年、波山の「葆光彩磁珍果文花瓶」(泉屋博古館蔵)と宮川香山の「褐釉蟹貼付台付鉢」(東京国立博物館蔵)が同時に重要文化財に指定されました。

2022年8月6日土曜日

東京都美術館「芸術✖力」4

 

しかしながら、46200円にして4㎏あるこの図録が、ミュージアムショップで果たして売れるものでしょうか?

こんな疑問を抱く方がいらっしゃるかもしれませんが、調査編集に関係した一人として、1冊はゼッタイ売れると思います。かつて静嘉堂文庫美術館ミュージアムショップで、拙著『琳派 響きあう美』が売れたことがあったんです!! しかも2冊も‼ この拙文集だって、定価9000円にして1.2㎏あるんですから() 

この拙文集もまた「残部僅少」です――「残部僅少」なんじゃないかな?――いや、間もなく「残部裁断」となっちゃうのかな?() 


2022年8月5日金曜日

東京都美術館「芸術✖力」3

先に「もちろん国宝に指定されたにちがいない『平治物語絵巻』も出陳されているそうです」と伝聞体で書いたのは、まだ見ていないからなんです。先日アップしたギックリ腰がようやく癒えたと思ったら、BA57波とこの暑さです。少し収まったら必ず出かけたいと思います。

しかしミズテンで書いちゃったのは、「芸術×力」が先にアップした『ボストン美術館日本美術総合調査図録』の一部を反映したような特別展だからです。それだけじゃ~ありません。ミュージアムショップで、この図録そのものを売っているんです。


2022年8月4日木曜日

東京都美術館「芸術✖力」2

 

わが国では、東京国立博物館が「六波羅行幸の巻」を、そして静嘉堂文庫美術館が「信西の巻」をコレクションしています。東京国立博物館本は国宝になっていますから、ボストン美術館本も当然国宝になるべき一巻なのです。

静嘉堂文庫美術館本は重要文化財ですが、これも当然国宝になるべき一巻ということになります。しかもこれは国内にあるわけですから、ソク国宝にバージョンアップすることが可能ではないでしょうか?

 ヤジ「いくら静嘉堂のディレクターをやっているからといって、我田引水に過ぎる!!

「平治物語絵巻」が合戦絵巻の傑作中の傑作であることは疑いありません。あの王朝ロマンを視覚化した様式であるやまと絵が、典型美へと高められています。しかしそれと同時に、鎌倉リアリズムの影響を受けている点に、興味尽きないものがあります。リアルに受けている点に……(笑)

2022年8月3日水曜日

東京都美術館「芸術✖力」1

 

東京都美術館「芸術✖力 ボストン美術館展」<102日まで>

 いま東京都美術館では、「芸術×力」と題するボストン美術館名品展を開催中です。わが国に遺っていれば、もちろん国宝に指定されたにちがいない「平治物語絵巻」も出陳されているそうです。

「人々御苦労平治の乱」(!?)をモチーフにした軍記物語『平治物語』を絵巻物に仕立てた傑作で、鎌倉時代中期の制作と推定されています。もともとは15巻くらいの大絵巻物だったようですが、現在遺るのはその一部で、ボストン美術館が所蔵するのは「三条殿夜討の巻」――もっとも劇的で興奮させられる一巻です。

2022年8月2日火曜日

ボストン美術館日本美術総合調査図録9

 

2001年のときは、スクワム・レイク湖畔のサンドイッチ・ギャラリーという店で、シノワズリー調のカップ&ソーサーを求めました。いまも愛用していますが、あとでオランダのペトラス・レグという窯の出来であることが判って、さらに愛着がわきました。このことは、『國華清話会会報』に書いたことがありますが……。

4年間にわたる実に楽しきボストン調査旅行ではありました。鹿島美術財団をはじめ、お世話になった方々に心からの感謝を捧げたいと思います。というわけで、すでにお名前をあげた方々と一緒の旅でしたから、皆さんが期待する「こころの風景」みたいな赤ゲット珍事は一つも起こりませんでした()

2022年8月1日月曜日

ボストン美術館日本美術総合調査図録8

 

 もう一つ忘れられない思い出は、スクワム・レイクへの週末避暑旅行です。今は大英博物館のキューレーターをつとめているニコル・ルマニエール・クーリッジさんが、招待してくれたんです。ボストンの北に位置するメーン州にスクワム・レイクという湖があり、そのなかにあるロングアイランドという島にサマー・ハウスをお持ちなんです。4回の調査とも中日なかびの週末に、3人で押しかけました。

1998年は河合さんが運転するレンタカーで出かけました。ニューベリー・ストリートの紫藤廬というチャイニーズ・レストランでドンチャカやった翌朝だったこともあり、さらに怖いものがありました。ウソかホントか、河合さんは運転しながら寝ちゃうんです(!?)

渡辺浩『日本思想史と現在』11

渡辺浩さんの著作を拝読すると、恩師・丸山真男先生に対する尊崇の念が行間からも感じられます。スチューデント・エヴァリュエーション――学生による先生評価も世の流れですから致し方ないと思いますが、学問における師弟とはこうありたいものだと、襟を正したくなります。 丸山真男先生といえば、 ...