竹浪遠・山本尭編『龍の美術史』中央公論美術出版 2026年
最近読んでおもしろかった美術書を「7日間ブックカバーチャレンジ」に取り上げてきたら、みんな著者が女性になってしまいました。チョッと口惜しいので( ´艸`)、7冊目は男性による美術書を選ぶことにしましょう。男性といっても編者で、論文執筆者には4人も女性が含まれているのですが……。
かつて7日間ブックカバーチャレンジで取り上げた『松竹梅の美術史』に続く第2弾です。はじめて僕が雲龍図を扱ったのは、半世紀以上まえ「探幽筆日光東照宮陽明門雲龍図天井画について」という拙文を『美術研究』に寄稿したときでした。
しかし本書のコシマキにある「東洋のイマジネーション」という視点を欠いていました。その後もこれを深く考える機会はありませんでした。何か龍について書くときは、金井紫雲の『東洋画題綜覧』でお茶を濁していましたが、これからは必ず『龍の美術史』をひもとくことにしたいと思います。なお本書の出版もまた鹿島美術財団の助成によるところです。
『唐詩選』に選ばれる杜甫の五言律詩「禹廟」に、龍の障壁画が詠まれていることを思い出しました。またまたマイ戯訳で紹介することにしましょう。四川省忠州にも禹廟――夏王朝の始祖とたたえられる聖天子の禹を祀った廟がありました。765年、揚子江を船で下る流浪の旅に出た杜甫が、この禹廟に立ち寄って詠んだ一首だそうです。杜甫は「龍蛇」としていますが、「青龍・玄武」と訳してみました。
夏かの禹うの廟びょうは人気ひとけなき 山の真中まなかに鎮しずまりて
秋風 吹いて夕日影 今しも斜めに射している
その庭前は荒れ果てて 柑橘かんきつの木に実が熟れて
古びた廟の障壁に 青龍・玄武が描かれる
長江 望む絶壁に 雲がモクモク湧き起こり
その下 流れる水の音ねも 走り去ってく砂の上
四種の乗り物 禹が駆使し 治水工事で三巴から
長江の水 引いた苦労――いま廟前に偲しのんでる

