2025年5月23日金曜日

東京国立博物館「蔦屋重三郎」3

 

これまた絶対おススメの特別展です。もちろん僕はNHK文化センター青山教室講座「魅惑の日本美術展 最強ベスト6!!」に選び、先日しゃべったところです。「ごあいさつ」にあるように、今年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」とのコラボ展です。

このような企画を冷ややかにみる専門家もいらっしゃるでしょうが、美術展をコンテンツビジネスととらえている点が新鮮です。展覧会がコンテンツビジネスのおもしろさを教えてくれる点も興味深い‼ だれですか、結局は大河ドラマの宣伝じゃないかなんて言っているのは?

 「僕の一点」は恋川春町作・北尾政美(鍬形蕙斎)画「鸚鵡返文武二道おうむがえしぶんぶのふたみち」ですね。版元はもちろん耕書堂蔦屋重三郎、寛政元年(1789)正月刊行された黄表紙、本展には東京国立博物館所蔵の1本が出陳されています。

魅惑の日本美術展 最強ベスト6だ!!

講師
東京大学名誉教授・出光美術館理事 河野 元昭

カテゴリー

最強ベスト6はこれだ!

日本は美の国です。美術のまほろばです。絵画彫刻工芸のシャングリラです。だからこそ、素晴らしい美術展がたくさん開かれ、老若男女を問わず多くの人々に感動を与えて止むことがないのです。それは文字情報とは異なる真の教養を高め、明日を生きるためのエネルギーを心に注ぎ込んでくれます。美術ブログでお馴染みの「饒舌館長」こと河野元昭先生が選ぶ2025年度日本美術展最強ベスト6だ!で予習をしてから出かければ、もうカタログなんか買う必要はありません(!?)

2025年5月22日木曜日

東京国立博物館「蔦屋重三郎」2

 

蔦重はその商才を活かして、コンテンツビジネスを際限なく革新し続けました。その原動力は徹底的なユーザー(消費者)の視点であり、人びとが楽しむもの、面白いものを追い求めたバイタリティーにあるといえるでしょう。 本展では、蔦屋重三郎を主人公とした2025年の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)とも連携 し、江戸の街の様相とともに、蔦重の出版活動をさまざまにご覧いただきます。蔦重が江戸時代後期の出版文化の一翼を担っていただけでなく、彼が創出した価値観や芸術性がいかなるものであったかを体感いただければ幸いです。

 昨日と今日2回に分けて掲げたのは、いま東京国立博物館で開かれている特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」のカタログ巻頭に載る「ごあいさつ」です。

2025年5月21日水曜日

東京国立博物館「蔦屋重三郎」1

 

東京国立博物館「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」<615日まで>

江戸時代の傑出した出版人である蔦重こと蔦屋重三郎(175097)は、喜多川歌麿、東洲斎写楽といった現代では世界的芸術家とみなされる浮世絵師を世に出したことで知られています。本展ではその蔦重の活動をつぶさにみつめながら、天明、寛政期(17811801)を中心に江戸の多彩な文化をご覧いただきます。

蔦重は江戸の遊廓や歌舞伎を背景にして、狂歌が隆盛する中、狂歌師や戯作者とも親交を深めるなど、武家や富裕な町人、人気役者、人気戯作者、人気絵師のネットワークを縦横無尽に広げ、さまざまな分野を結びつけた、さがらメディアミックスとでも言うべき手法によって、出版業界にさまざまな新機軸を打ち出します。


2025年5月20日火曜日

高階秀爾先生に感謝を捧げる会9

 

少なくとも僕には、単なる異国趣味もやがて偉大な文学を生む起因と原動力になることを、北原白秋がみずから語っているように思われたのでした。この偉大な文学の水底にも、やはり単なる異国趣味がたゆとうていました。『邪宗門』こそ偉大な異国趣味の詩集であったのですが、大変失礼ながら、そこに西欧文明の本質的理解があるとはどうしても思えませんでした。

それは白秋子供時代の異国趣味とほとんど同じような趣味でした。だからこそ『邪宗門』は素晴らしく、日本人の心を打った、そしていまも打つのではないでしょうか。この点で、白秋における異国趣味も、ジャポニスムにおける異国趣味と軌を一にしているのではないでしょうか。

もしも「ジャポニスムの起因と原動力」の続編を書く機会があったら、必ず『思ひ出』の「わが生ひたち」から引用することでしょう。拙論は多くのジャポニザンに対する感謝の言葉で〆ましたが、さらにこれを加えれば、もうチョッとおもしろくなったかな()


2025年5月19日月曜日

7日間ブックカバーチャレンジ⑦


  女性漫画家第一号ともいうべき上田としこの伝記漫画です。 かつて朝日新聞日曜版で紹介されたことがあり、それ以来そのうち読んでみようと思ってきました。 上田としこファンの村上もとかによる全10巻ーーメルカリでゲット、毎日昼食のあとで1巻ずつ、数日前にフィニッシュしました。これもしばらくぶりにひいた風邪のお陰かな( ´艸`)

高階秀爾先生に感謝を捧げる会8

 

 これこそ単なる異国趣味――外国の風物をあこがれ好む趣向の典型だといってよいでしょう。それはTonka Johnという英語名に象徴されています。しかし『邪宗門』を改めて読み返し、その官能性や象徴性にからめ取られるとき、あるいは浪漫主義の新風を築き、そのあと多くの詩人や歌人に決定的印インスピレーションを与えたという文学史上の意義を知るとき、それは幼き日の異国趣味が白秋にあったからなのだと教えてくれるのでした。

それを納得させてくれる、あまりにも美しい序文「わが生ひたち」でした。この幼き異国趣味なくして、『邪宗門』は存在しなかったのです。天井にいらっしゃる白秋ファンの高階先生も、そうお思いにはなりませんか? 


2025年5月18日日曜日

高階秀爾先生に感謝を捧げる会7

 

私の異国趣味は穉おさない時既にわが手の中に操られた。菱形の西洋凧を飛ばし、朱色の面(朱色人面の凧、Tonka Johnのもってゐたのは直径一間半ほどあった。)を裸の酒屋男七八人に揚げさせ、瀝青チャンを作り、幻灯を映し、さうして和蘭訛の小歌を歌った。

私はまたいろいろの小さなびいどろ罎びんに薄荷や肉桂水を入れて吸って歩いた。また濃い液は白紙に垂らし、柔かに揉んで湿した上その端々を小さく引き裂いては唇にあてた。さうして私の行くところにはたよりない幼児の涙をそそるやうに、強い強い肉桂の香が何時でも付き纏ふて離れなかった。(略)

Tonka Johnの部屋にはまた生まれた以前から旧い油絵の大額が煤すすけきったまま土蔵づくりの鉄格子窓から薄い光線を受けて、柔かにものの吐息のなかに沈黙してゐた、その絵は白いホテルや、瀟洒な外輪船の駛しってゐる異国の港の風景で、赤い断層面のかげをゆく和蘭人に一人が新らしいキヤベツ畑の垣根に腰をかがめて放尿してゐるおっとりとした懐かしい風俗を画いたものであった。私はそのかげで毎夜美しい姉上や肥満ふとった気の軽るい乳母と一緒に眠るのが常であった。


東京国立博物館「蔦屋重三郎」3

  これまた絶対おススメの特別展です。もちろん僕はNHK文化センター青山教室講座「魅惑の日本美術展 最強ベスト 6 だ !! 」に選び、先日しゃべったところです。「ごあいさつ」にあるように、今年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」とのコラボ展です。 このような企画...