2026年3月5日木曜日

今や北斎・広重とともに「風景版画の3H」とたたえられる川瀬巴水を中心とする新版画展が三菱一号館美術館で開催中です!! 2

 


本展では、新版画に魅せられた米国のコレクター、ロバート・オットー・ミュラー (1911-2003) が築いた新版画を中心とする日本近代の版画コレクションを紹介します。 同氏は学生の頃に新版画に出会い、 日米開戦前に訪日し新版画を収集し、60年以上かけて4,500点近くにおよぶ世界最高峰のコレクションを築きました。 スミソニアン国立アジア美術館に遺贈されたこれらの作品を中心に、同館が所蔵する版画作品91点と、当時の日本の人々や風俗を記録した同時代の写真34点を併せて展示し、三菱一号館美術館所蔵の版画25点を加えて、清親が描いた浮世絵の最後のきらめきと、吉田博川瀬巴水らにいたる風景版画の流れ、写真との影響関係を展観します。 


このカタログブックには、ゲストキューレーターであるスミソニアン国立アジア美術館のフランク・フェルテンズさんと、三菱一号館美術館の野口玲一さんによる論文が載っていて、しっかりした内容を分かり易く語ってくれています。手に親しみ易い版型で、ページを繰るのが楽しいカタログブックに仕上がっています。 

2026年3月4日水曜日

今や北斎・広重とともに「風景版画の3H」とたたえられる川瀬巴水を中心とする新版画展が三菱一号館美術館で開催中です!! 1


 三菱一号館美術館「トワイライト、新版画――小林清親から川瀬巴水まで」5月24日まで
 

いま三菱一号館美術館で上記の特別展が開かれています。まずはそのカタログ――単行本としても販売されるカタログブックから、日本主催者の「ごあいさつ」を一部引用することにしましょう。

 

江戸時代に高い人気を誇った浮世絵版画は、明治期以降、写真や新聞、雑誌といった新しい技術やメディアの勃興により徐々に衰退し、「黄昏 (トワイライト)」の時代を迎えることになります。 こうした時代の移り変わりを受けて、大正から昭和初期には、伝統的な木版画の技法の復興を目指した版元渡邊庄三郎の働きかけにより、川瀬巴水や吉田博らの絵師たちを中心に「新版画」の作品が盛んにつくられるようになります。 彼らは技術ばかりでなく、清親らが画面に留めようとした情趣を引き継ぎ、 新しい日本の風景を発見していきました。 その高い芸術性は欧米を中心に衝撃をもって受け入れられ、現在も熱烈に評価されています。

2026年3月3日火曜日

オチャケならぬお茶が大好きな方々に絶対おススメの「出光美術館蔵 茶道具名品展」が大倉集古館で開かれています!! 14

 


 川柳だって負けていませんが、「いろりにてくどきおとして麦の中」というのはチョッと分かりにくい――しかし浜田義一郎先生「冬の内にいろり端でくどいて色よい返事を得てから、人目にふれぬほどに麦が生長するまで待って、思いをとげるという田舎のしんぼう強い色ごとである」という「鑑賞」を読めば、自然に笑みがこぼれてきます。ドリフターズの「誰かさんと誰かさんが麦畑」は江戸川柳から来ていです( ´艸`)

それはともかく、麦は古くから日本のイネ科植物として認識されていたのでしょう。狩野重信の時代、麦はどこでも容易に見ることができ、普通に食されていたことは、改めて指摘するまでもありません。つまり出光美術館所蔵の狩野重信筆「麦・芥子図屏風」は漢のヒナゲシ×和の麦というペアになるわけです。

 

  ヤジ「この間も北斎の『詩哥写真鏡』は日中和漢のペアだと言ってたけど、もうチョッと違う見方はできないの?」 


  

2026年3月2日月曜日

オチャケならぬお茶が大好きな方々に絶対おススメの「出光美術館蔵 茶道具名品展」が大倉集古館で開かれています!! 13

 


たとえ僕の印象が間違っているとしても、ヒナゲシや芥子が中国的なイメージを有する草花であることだけは証明されたように思います。すると出光美術館が所蔵する狩野重信の「麦・芥子図屏風」は、和漢のイメージを組み合わせた一双屏風ということになるのではないでしょうか 


麦は早くも『万葉集』に「馬柵うませ越しに麦む駒のはつはつに新肌にいはだ触れし児ろし愛いとしも」と詠まれています。中西進さんによれば、「馬柵ごしに麦を食べる駒のように、やっと僅かに新肌を触れた子が愛おしいよ」いう相聞歌になります 


俳諧となれば枚挙にいとまありません。与謝蕪村にも「狐火やいづこ河内の麦畠」という、いかにも蕪村らしい佳吟があります。同じ麦でも、」「麦の穂」「麦の秋は夏の季語、麦の芽は冬の季語になるそうです。麦が日本人の生活と密接に結びついた結果、細分化されることになったのでしょう。 

2026年3月1日日曜日

オチャケならぬお茶が大好きな方々に絶対おススメの「出光美術館蔵 茶道具名品展」が大倉集古館で開かれています!! 12

 


それだけではありません。それを我が国で幽玄なる芸能に昇華した能謡曲「項羽」に、より一層注意を注ぎたい心持ちになってきたのです。その意味からも、先の『能狂言事典』に「異国の英雄を主人公にし、後ジテ・ツレにいくぶんかのエキゾティシズムを感じさせるが、構想は多分に日本的で、むしろ修羅物に近い」とある点は、きわめて興味深く感じられます。 


この項を執筆した味方健さんは、「項羽」という能謡曲が日本的だと指摘しているのです。能柄として五番目物に決められている「項羽」が、実際は修羅物(二番目物)に近いというのも、それと無関係ではありません。

 

五番目物というのは、正式とされる五番立ての演能で、最後に演じられるお能です。強烈なエナジーを秘めたちょっとシュールな存在が活躍するのが特徴です。修羅物は武人の霊を後ジテとし、死んだあと修羅道で苦しんでいることを吐露するお能が多いとされています。味方さんの指摘はそのとおりだと思います。 

2026年2月28日土曜日

オチャケならぬお茶が大好きな方々に絶対おススメの「出光美術館蔵 茶道具名品展」が大倉集古館で開かれています!! 11


この茶壷を所有したにちがいない高位貴顕も、使ったり眺めたりした上層町衆ひとしなみに「垓下がいかの歌」や「項羽」を思い出したことでしょう。いや、絵付けは虞美人草なのですから、まず初めには虞美人が胸底に浮かんだにちがいありません 


この仁清作「色絵芥子文茶壷」の絵付け単に華麗優美なだけでなく、楚々とした美感にあふれ得もいわれぬ哀調をおびチョッと風が吹けばすぐに揺れ動きそうな可憐な情趣をたたえていいます。今回僕がはじめて気づかされた「色絵芥子文茶壷」の美と妙です 


それはオマエの印象にすぎないと言われれば返す言葉もないのですが、あえて淵源を探っていくと、項羽と虞美人の歴史的物語があり、「垓下がいかの歌」があり、姜夔きょうきのような漢詩もあったような気がしてきたのです。 

 

2026年2月27日金曜日

オチャケならぬお茶が大好きな方々に絶対おススメの「出光美術館蔵 茶道具名品展」が大倉集古館で開かれています!! 10

 


 上層町衆を含めた当時の知識人は、能謡曲に馴れ親しみ、日々の生活に彩りを添え、また社交のヨスガとしていました。ウソだと思う方は、拙論「宗達と能」や「光琳と能」をご笑覧くださいませ´艸`) 


野々村仁清も、仁清を支援し仁清焼を好んで用いた町衆も、門前に仁清窯のあった仁和寺や他の僧侶たちも例外ではなかったはずです。御水尾天皇のあとを継いだ霊元天皇を中核とする宮廷文化圏でも、能謡曲は愛好されたことでしょう。このような知識人や教養人にとって、能謡曲は生活の一部をなす文化だったのです。

 

仁清がこの「色絵芥子文茶壷」のモチーフに芥子やヒナゲシを選んだとき、能謡曲の「項羽」が意識されないはずはありません「項羽」から発想したとは思いませんが、構想した段階で仁清の脳裏に虞美人のイメージ、虞美人草のかすかな伝説の記憶がよみがってきた可能性は、けっして低くないでしょう 

今や北斎・広重とともに「風景版画の3H」とたたえられる川瀬巴水を中心とする新版画展が三菱一号館美術館で開催中です!! 2

  本展では、新版画に魅せられた米国のコレクター、ロバート・オットー・ミュラー (1911-2003) が築いた新版画を中心とする日本近代の版画コレクションを紹介します。 同氏は学生の頃に新版画に出会い、 日米開戦前に訪日し新版画を収集し、60年以上かけて4,500点近くにおよぶ...