それだけではありません。それを我が国で幽玄なる芸能に昇華した能謡曲「項羽」に、より一層注意を注ぎたい心持ちになってきたのです。その意味からも、先の『能狂言事典』に「異国の英雄を主人公にし、後ジテ・ツレにいくぶんかのエキゾティシズムを感じさせるが、構想は多分に日本的で、むしろ修羅物に近い」とある点は、きわめて興味深く感じられます。
この項を執筆した味方健さんは、「項羽」という能謡曲が日本的だと指摘しているのです。能柄として五番目物に決められている「項羽」が、実際は修羅物(二番目物)に近いというのも、それと無関係ではありません。
五番目物というのは、正式とされる五番立ての演能で、最後に演じられるお能です。強烈なエナジーを秘めたちょっとシュールな存在が活躍するのが特徴です。修羅物は武人の霊を後ジテとし、死んだあと修羅道で苦しんでいることを吐露するお能が多いとされています。味方さんの指摘はそのとおりだと思います。






