2026年2月8日日曜日

北斎をネタにした斬新な見方の浮世絵版画展が今すみだ北斎美術館で開催中❣❣❣15

 


……とここまで書いて、そういえば前にも韓愈の「左遷せられて藍関に至り姪孫の湘に示す」に戯訳を付けたことがあったなぁと思い出しました。「汝」を韓湘とする旧訳の方がいいような気もするので、アップさせてもらうことにしましょう 

 上奏文を朝方に 一通上げたよ朝廷へ 

 夕べにゃ左遷さ八千里 遠く遥かな潮州へ 

 天子のために弊害を 取り除かんとしたまでで 

 老残の身だ わずかなる 余命を惜しむ気などない 

 秦嶺山脈 雲垂れて 我が家がどこかも分からない 

 藍田関は雪景色 我が乗る馬も尻ごみす 

 わざわざ湘君 来てくれた その気持ちなら分かってる 

 瘴江――毒気に満つほとり 俺の遺骨を拾うべし 

2026年2月7日土曜日

北斎をネタにした斬新な見方の浮世絵版画展が今すみだ北斎美術館で開催中❣❣❣14

 

ちょうど子供くらいでしょうか、そんな年齢差の韓湘に対するや韓愈のさしい思いやりを読み取りたいのです。それは肉親の情愛といってよいでしょう。清水茂校注『韓愈』<『中国詩人選集』11>(岩波書店 1958年)によると、この詩は『太平記』に引かれ、また織田信長と稲葉一徹の逸話が伝えられるなど、日本人にとってもっとも著名な韓愈詩だったそうです。 

「木賊苅」は世阿弥作ともいわれるお能「木賊」に取材しています。都の僧の若い弟子・松若が、信濃国で木賊刈をやっている父を訪ねて行くと、老父はそれと気づかずに別れた愛児を慕いつつ、その舞の手振りを真似ながら舞うのでした。まさに親子の情、肉親の情愛が主題となっているのです。同じく肉親の情愛を強く感じさせる韓愈の詩と、違和感なく結びつくでしょう両者は都を遠く離れた異郷という点でもペアにふさわしいですね。 

2026年2月6日金曜日

北斎をネタにした斬新な見方の浮世絵版画展が今すみだ北斎美術館で開催中❣❣❣13

 

 画題空欄一図をみると、雪のなかで確かに馬がイヤイヤをしているじゃ~ありませんか。この韓愈の七言律詩であることは、いささかも疑いありません。韓愈は儒教を尊んだ中唐の文章家にして詩人、詩にある「上奏文」とは、仏教信者の憲宗に奉った「仏骨を論ずる表」のことです。韓愈はこの詩を姪孫てっそん、つまり次兄韓介の孫である韓湘かんしょうに贈ったのです。 

このとき韓愈は52歳、韓介は26歳でした。韓愈は自分の生き方に誇りを感じつつも、韓湘にはこんな人生の悲哀を味わってほしくない――という気持ちを込めたにちがいありません。ちなみにその後神仙の術を学んだ韓湘は、有名な八仙人の一人に数えられるようになりました。 

2026年2月5日木曜日

北斎をネタにした斬新な見方の浮世絵版画展が今すみだ北斎美術館で開催中❣❣❣12

 

    上奏文を宮殿の 天子へあした奉りゃ 

  夕べに遠路も八千里 ある潮州ちょうしゅうへ流された 

  聖天子のため悪弊を 取り除こうとしただけで 

  老いさらばえたこの身ゆえ 長生きしたい――とは露も…… 

  秦嶺しんれい山脈 雲の中 旧家はいずこの方角か? 

  藍田関らんでかんは豪雪に 埋うずもれ馬も進みません 

  愛馬よ!!ここまで来たのには 目的あってのことだろう 

  それなら遺骨を瘴気しょうき満つ 河のほとりに埋めてくれ!! 

2026年2月4日水曜日

北斎をネタにした斬新な見方の浮世絵版画展が今すみだ北斎美術館で開催中❣❣❣11

 

 「韓愈×木賊苅」は肉親の情愛ペアです。この韓愈と見なされる一図には、雪中を進む騎乗の人物と従者が描かれていますが、その題箋には「詩哥写真鏡」とあるだけで、その下の画題が不思議なことに空欄になっています。そのこともあって、この一は蘇東坡をモチーフにしたものであ、「東坡騎驢」や「東坡戴笠」という伝統的画題のバージョンであると考えられてきました。

 

ところがその後、永田生慈さんが蘇東坡ではなく韓愈だという説を出されたです。平成5年(1993)、永田さんが企画した「大北斎展」が東武美術館で開かれましたそのカタログ解説に韓愈説が書かれていたので、これだ!!と思いましたが、さらに早く永田さんは韓愈説を発表していたようです。現在では韓愈説が通説になっています北斎が取材したのは、韓愈の代表「左遷されて藍関らんかんに至り姪孫てっそんしょうに示す」です。これまたマイ戯訳で……。

2026年2月3日火曜日

北斎をネタにした斬新な見方の浮世絵版画展が今すみだ北斎美術館で開催中❣❣❣10

 

 「李白」の方は、彼が詠んだ連作「廬山の瀑布を望む」の一首を絵画化したものです。NHK青山文化講座では、中国語の暗唱をやって拍手を強要しましたが( ´艸`)ここではマイ戯訳で……。 

 日に照らされる香炉峰 たなびく霞は紫だ 

 はるか向こうに川が見え 瀧が一条かかってる 

 ほとばしる水 垂直に 落下すること1000メーター 

 空のてっぺんから落ちる 天の川かと間違えた 


 これも人間にとってアンタッチャブルである自然に対する驚嘆ですから――この場合は自然へのオマージュというべきかもしれませんが、あまりに速い月日の経過という自然に対する春道列樹の驚き相性バツグンだといってよいでしょう。飛鳥川と廬山の瀧はもちろん、時空という二つの自然も対になっているようです 

2026年2月2日月曜日

北斎をネタにした斬新な見方の浮世絵版画展が今すみだ北斎美術館で開催中❣❣❣9

   春道列樹はるみちのつらき×李白」は対自然驚愕ペアです。列樹は平安前期の公家歌人、「百人一首」に採られる「山やまがわに風のかけたるしがらみは流れもあへぬもみぢなりけり」が代表歌です。「詩哥写真鏡」<春道のつらき>もこの和歌によると言われていますが、柵しがらみ、つまりたくさん溜まって柵さくのようになっモミジがまったく描かれていません。

 

そこでもう一つの代表歌である「きのふといひけふとくらして飛鳥川ながれてはやき月日なりけり」が基になっているというのがマイ見解です。月日の経過がいかに早いものか改めて驚いているのですが、人間が手を加えることができない自然に対する驚愕を詠んでいるといってよいでしょう。 



北斎をネタにした斬新な見方の浮世絵版画展が今すみだ北斎美術館で開催中❣❣❣15

  ……とここまで書いて、そういえば前にも韓愈の「左遷せられて藍関に至り姪孫の湘に示す」に戯訳を付けたことがあったなぁと思い出しました。 「汝」を韓湘とする 旧訳の方がいいような気もするので、アップさせてもら うことにしましょう 。    上奏文を朝方に 一通上げたよ朝廷へ   ...