川瀬巴水――懐かしい!!といった得もいえぬ気持ちにさせてくれる版画家です。はっきりいって、パッと見たときの圧倒的感動は皆無です。美術史的興味を掻き立ててくれる、強烈なモチーフが眼球に飛び込んでくるわけでもありません。もちろん官能を刺激する要素はゼロに等しい。ただただ懐旧の情を呼び起こして、小さな画面の前に立つ僕を癒してくれるのです。
そんなの絵画としておもしろくないじゃないか、爆発がなきゃ芸術じゃない、あまりにも退嬰的世界じゃないかと言う人がいたら、「そのとおりですけど……」と言って通り過ぎることにしましょう。




