「韓愈×木賊苅」は肉親の情愛ペアです。この韓愈と見なされる一図には、雪中を進む騎乗の人物と従者が描かれていますが、その題箋には「詩哥写真鏡」とあるだけで、その下の画題が不思議なことに空欄になっています。そのこともあって、この一図は蘇東坡をモチーフにしたものであり、「東坡騎驢」や「東坡戴笠」という伝統的画題のバージョンであると考えられてきました。
ところがその後、永田生慈さんが蘇東坡ではなく韓愈だという説を出されたんです。平成5年(1993)、永田さんが企画した「大北斎展」が東武美術館で開かれました。そのカタログ解説に韓愈説が書かれていたので、これだ!!と思いましたが、さらに早く永田さんは韓愈説を発表していたようです。現在では、韓愈説が通説になっています。北斎が取材したのは、韓愈の代表作「左遷されて藍関らんかんに至り姪孫てっそん湘しょうに示す」です。これまたマイ戯訳で……。