沲江だこうこの座敷の中を流れゆき岷山みんざんここまで連なり来てる
波頭なみがしら白く飛沫しぶきが白壁に豪華な梁はりを突き抜く青山
松杉の林の冷気や菱ひし荇菜あさざその香が部屋に満ちる不思議さ
雪雲ゆきぐもが点綴てんていしてるが絵空事えそらごと砂地の草は微范惨憺びぼうさんたん
嶺ねの雁は小さな点々川虹は画絹の艶つやの中で水飲む
紅散らしゃ洲に咲き乱る花の蕊しべ墨掃きゃ石の蔦長く伸ぶ
暗き谷雨ゆえではなく紅葉こうようも霜に打たれたためじゃない
(すべからく絵描きの筆の穂先から生まれ出でたる風物なのだ)
神仙の住処すみかの周りは秋景色みずうみ囲んで絶景広がる
この画家の技量は秀逸もの思う胸に興趣が鬱勃うつぼつと湧く
以前から謝安のごとき厳鄭公げんていこう隠遁への夢持ち続けてる
*謝安 山水を愛し、江南の山中に世を逃れていましたが、招きを受けて朝廷に出仕し、政治・軍事に手腕をふるった晋の人だそうです。





