2021年10月17日日曜日

東京美術俱楽部「美のまなざし」「東美特別展」2

 

ここで「美のまなざし 東京美術倶楽部を彩った東京国立博物館所蔵の名品」という展覧会が開かれています。出陳されているのは、東京美術倶楽部とゆかりの深い東京国立博物館コレクションから選ばれた、国宝2点、重要文化財3点を含む10点の名品です。

もう一つの「東美特別展 数寄を未来に」は、東京を代表する美術店の方々が、自慢の逸品をそれぞれのブースで展示する美術展で、今年は21回目を迎えました。すでに『國華』で紹介された名品や初公開の優品が、ガラス越しじゃ~なく、直に鑑賞できるというのがウリなんです。しかし、両者とも開催期間が1015日からたった3日間というのですから、これまた並みの展覧会じゃ~ありません。

2021年10月16日土曜日

東京美術倶楽部「美のまなざし」「東美特別展」1

 

東京美術倶楽部「美のまなざし 東京美術倶楽部を彩った東京国立博物館所蔵の名品」と「東美特別展 数寄を未来に」<1017日まで>

 東京美術倶楽部で「美のまなざし」展と「東美特別展」が開かれています。東京美術倶楽部といっても、よほどの美術ファンでなければピンとこないかもしれません。東京美術倶楽部は、美術作品を本当に欲しいコレクターのもとへ安全に旅をさせるという、美術にとってなくてはならない崇高にしてまた現実的な仕事を続けてきた、ものすごい組織です。

東京美術倶楽部は優秀にして誠実な「美のナビゲーター」「美のメッセンジャー」なのです。僕たちが研究している日本美術史も、東京美術倶楽部によって支えられてきた部分がとても大きいのです。東京美術倶楽部は株式会社の形をとっていますが、並みの株式会社じゃ~ありません。

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」13

金井烏洲「山寺早起」(菊池五山『五山堂詩話』補遺1)

  間遠に聞こえる鐘の声 霧もようやく晴れ渡る

  春のあけぼの山中は 冷ややかなること秋に似る

  五重の塔の影長く 庭に映って三、四丈

  残[のこ]んの月が老松の テッペン高く浮かんでる

 

2021年10月15日金曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」12

 

金井烏洲「竹を移す」(菊池五山『五山堂詩話』補遺1)

  竹をみずから移植した  

緑が映るよカーテンに……

  なかるべからず庭に竹  

なくていいんだ花なんか

  俗事だったらやらないが 

親友のため買ってでた

  数本だって充分だ

清風すでに家に満つ


2021年10月14日木曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」11

これは文化13年(1816)、郷里上州から江戸へ出た21歳の烏洲に対する菊池五山の印象です。本当は心やさしいのに、それを素直に表現することができず、今の言葉でいえば、空気が読めず自分が正しいと信じる考えをストレートに述べて浮き上がってしまう、純粋にして孤独な青年烏洲の姿が彷彿としてきます。あるいは、いまの伊勢崎から大江戸に出てきて、チョット虚勢を張っていたのでしょうか。

これに続けて、五山はそのころ詠まれた烏洲の詩を3首紹介しています。現在知られる烏洲のもっとも早い吟詠だそうですが、20代初めの詩とは思えない成熟した漢詩世界を創り出しています。この3首と、しの木弘明著『金井烏洲』から選んだ3首を、マイ戯訳で紹介することにしましょう。『金井烏洲』からの3首は、すべてお酒にからむ詩になってしまいましたが……()

 

2021年10月13日水曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」10


 しの木弘明著『金井烏洲』は、今回カタログ・エッセーを書くに当たって、はじめて読んだモノグラフです。しの木氏のライフワークだったにちがいなく、本当によく調査されています。多くのことを学びましたが、とくに烏洲がすぐれた漢詩人であったことに、深く心を動かされました。烏洲こそ関東南画を代表する詩画一致の画家だと確信した次第です。

菊池五山の『五山堂詩話』補遺第1巻にも著録されているとのこと、静嘉堂文庫にある天保版を見たところ、しの木氏が省略していたロマンティックな七言詩「七夕」も知ることができました。

五山は烏洲について「外面は骯髒[こうそう]だけれども内面は温藉[おんしゃ]である」とたたえています。「骯髒」を『諸橋大漢和辞典』に求めると、「直を好んで志を得ないさま」とありますから、直情径行にして周囲との折り合いが悪く、みずからの矜持にこたえるほどの高い評価も得られなかったのでしょう。温藉は心広く包容力があってやさしいという意味です。

 

2021年10月12日火曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」9

 

今回の口演では、「関東文人画」ではなく「関東南画」を用い、「関東南画」「関東南画」と連呼したことでした。これまで僕は「文人画」支持者だったのですが、「南画」支持者に豹変したんです。最近、豹変がはやっているようで、先日の朝日川柳にも「君子かは知らねど太郎豹変す」という名吟がありましたが、そういえば僕も同姓でした()

現在、このジャンルの絵画が人気ウスなのは、「文人画」という呼び方にも原因があるように思い始めたからです。親しみ易い「南画」といえば、もうチョット人気があがるかもしれません。それに初めから僕は、文人画≒南画と言ってきたわけですから、どっちを使っても構わないということになります。そもそも後期高齢者になると、もう文人画でも南画でも、細かいことはどうでもよくなるんです()

2021年10月11日月曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」8

 


 昨夜は庭の桐の葉が 散りゆくかすかな音がして

垣根の豆の花の下 鳴いていましたキリギリス

  林野に満ちる涼秋の 気配に初めて気がつけば

 木々の葉音は寂しくも 空うるおいて清々し

さいわいなるかな!! 枕辺の ともし火だけはまだ消えず

読書をすればこんな時 その効能は倍加する

しかし読書の目的は 役立つことより楽しみだ

名月見んとて起きあがりゃ 冬空みたいに高く冴え……

2021年10月10日日曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」7


 『宋詩紀事』は清の厲鶚[れいがく]が編纂した100巻のすごい本です。これを烏洲は所有していたんです!! 『宋詩紀事』には和刻本もないようですから、原本であったことは間違いないでしょう。驚くべきことです!! 

金山家は豪農であったにもかかわらず、伊勢崎藩への貸付が回収できず、烏洲は不遇な晩年を送ったといわれ、しの木弘明氏は著書『金井烏洲』(群馬県文化事業振興会 1976年)に「家産蕩尽す」という1章を設けているほどです。

しかし、貸付回収が不能だったことは事実だとしても、このような漢籍や古典籍を金に糸目をつけず購ったことも、原因だったのではないでしょうか。これも烏洲が真の南画家――さらに言えば真の文人画家であったことを物語っています。

ヤジ「またいつもの独断と偏見、妄想と暴走だろう! 証拠を見せてみろ!!

 証拠は見せられませんが、翁森の「四時の読書の楽しみ」<秋>にほどこしたマイ戯訳をお見せすることにしましょう() 

2021年10月9日土曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」6

「百度百科」によれば、この「四時の読書の楽しみ」は人口に膾炙しているそうですが、それは中国の話で、日本の烏洲がどうやってこれを知ったのでしょうか。『中国学芸大事典』にも出てこないようなマイナー文人の詩を……。

太田さんは『群馬県立近代美術館研究紀要』9号に、「金井烏洲試論――収蔵品紹介と『秋月書屋図』を一例に」という力作論文を発表しています。それによると、翁森の「四時の読書の楽しみ」は『宋詩紀事』と『翁氏宗譜』という中国の書に載っているそうですが、第3句の末字が前者では「薄」、後者では「寂」となっています。「秋月書屋図」の賛をみると、「薄」となっていますから、烏洲は『宋詩紀事』を見たにちがいありません。

2021年10月8日金曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」5

 

はじめ写真を見たとき、僕は有名な朱熹の「少年老い易く学成り難し 一寸の光陰軽んずべからず 未だ覚めず池塘春草の夢 階前の梧葉すでに秋声」をイメージした作品かなと思いました。しかしそうではありませんでした。画面左上に、中国・南宋の詩人である翁森の「四時の読書の楽しみ」という七言律詩四連詩の「秋」が着賛されているからです。明らかに烏洲はこの詩からインスピレーションを得て、画筆を採ったんです。

翁森は愛用する近藤春雄編『中国学芸大事典』にも載っていないマイナーな詩人で、僕も初めて知りました。ネット検索をかけると、中国の「百度百科」がアップされましたが、日本語では何も出てきません。

2021年10月7日木曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」4


かつて吉澤忠先生から求められ、『日本の南画』<水墨美術大系・別巻1>に「関東南画の成立と展開」を寄稿したとき、烏洲の画論『無声詩話』を引用したこともあります。しかし今回、はじめて烏洲の作品を20点もまとめて見ることができました。欣快の至りです。

「僕の一点」は、ポスターやカタログの表紙にも選ばれている「秋月書屋図」(群馬県立近代美術館蔵)ですね。烏洲はさまざまなスタイルの山水図を試みていることを教えられましたが、「秋月書屋図」もそのうちの一典型を示す作品です。

 端正な饒舌館長好みの着色山水図です。もちろんこの「端正な」は「着色山水図」にかかるのであって、「饒舌館長」にかかるわけじゃ~ありません() もとになった中国・院派系の山水図があるような気もしますが、具体的にこれと示すことはむずかしそうです。 

2021年10月6日水曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」3

 

群馬が生んだすぐれた南画家・金井烏洲の作品としては、何回か東京国立博物館の平常陳列で見た傑作「月ヶ瀬探梅図巻」がよく記憶に残っています。もちろん今回も出陳されています。カードを繰ってみると、昭和46124日に見たときの1枚が出てきました。今年は昭和96年ですから、ちょうど半世紀前のことです() 

そのころは僕も烏洲と同じくらいマジメだったらしく、上巻巻頭に頼山陽が寄せた題字と為書きを一生懸命書き写し、「克明に描いてあり、烏洲の真面目な人柄がしのばれる」などという印象批評を添えています。「中島伊平」とあるのは当時の所蔵家だったような気がします。そのころ東京国立博物館は、寄託品の個人コレクター名も堂々とキャプションに書いていましたからね。

2021年10月5日火曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」2

 

二つもやらせてもらったからといって、薦めているわけじゃ~ありませんよ( ´艸`)  そのカタログの「ごあいさつ」の一部を紹介しておきましょう。

本展では、江戸から広まった関東南画を軸に、谷文晁をはじめ、高久靄厓、渡辺崋山、立原杏所、椿椿山など江戸を中心に活躍した画人たちと、金井烏洲や矢島群芳、松本 宏洞ら群馬ゆかりの画人たちの作品を紹介します。関東南画はどういうものだったのか、人々のつながりをたどりながら、作品のもつ多彩な魅力に迫ります。

なお、本展でとりあげた江戸時代後期から明治時代前期は、その後、様々に展開していく近代の南画へとつながる過渡期ととらえることもできるでしょう。本展をきっかけとして、地方の状況と関東南画、南画のゆくえについても思いを巡らせていただくと同時に、地元の画人たちにも再び関心が寄せられ、親しまれる機会が増えることを願っております。

2021年10月4日月曜日

群馬県立近代美術館「江戸と上毛を彩る画人たち」1


群馬県立近代美術館「関東南画のゆくえ 江戸と上毛を彩る画人たち」<117日まで>

  群馬県立近代美術館で秋の特別展「関東南画のゆくえ 江戸と上毛を彩る画人たち」が始まりました。かつて『國華』で女性画家特輯号を組んだことがあります。そのとき江馬細香筆「蘭図」の解説をお願いした、実践女子学園香雪記念資料館の太田佳鈴さんが、群馬県立近代美術館のキューレーターとなり、満を持して開催する特別展です。錦秋を飾る「饒舌館長おススメ美術展」です!!

僕にもお呼びがかかり、カタログ・エッセー「金井烏洲著『無声詩話』関東南画展開論」を寄稿することができました。去る925日には、記念講演会「意外に愉快な関東南画――饒舌館長口演す――」を開催してもらいましたが、本当に久しぶりのトーク――乗りに乗ってしゃべったことでした。エッセー・口演ともに、七五調タイトルになっているところがミソです()


2021年10月3日日曜日

近藤先生の面白授業9

 

 近藤さんは絵画における「形似」、つまり広い意味でのリアリズムについて、蘇東坡の五言詩「鄢陵[えんりょう]の王主簿の画く所の折枝[せっし]に書す」を引いて説明を始めています。かつて『秋山光和博士古稀記念 美術史論文集』に寄せた拙文「『写生』の源泉――中国――」で、僕も引用したことがあるとても重要な一首です。その戯訳をアップさせてもらいましょう。近藤さんの解釈とチョッと違うところもありますが……。

  似てるかどうかで絵を決める――子どもの見方とおんなじだ

  平仄だけで詩を作る――詩の何たるかを知らぬ人

  詩と絵の理想は通底し 自然の巧みと清新さ

  辺鸞[へんらん]の鳥 生意あり 趙昌の花は真なれど

  君の双幅こまやかさ 簡潔性でまさってる

  「チョット洒落てる‼」――「バカ言うな。あふれる春光 見えんのか‼」

2021年10月2日土曜日

近藤先生の面白授業8

 


『図絵宝鑑』は我が国にも大きな影響を与えた画家伝で、中国・元の夏文彦[かぶんげん]が著わしたものです。これを書誌学的に考証し、さらに研究を広げたお二人の『図絵宝鑑校勘與研究』から、僕も大変大きな学恩を受けてきました。つまり『図絵宝鑑校勘與研究』は、これ以上まじめな美術書など、ほかにたくさんあるわけじゃ~ないといった感じの研究書なんです。

近藤さんにはこのような<ガチガチのガチ>ともいうべき仕事が、紀要論文をはじめとして、山ほどあることも、ぜひ書き添えておきたいと思います。

近藤さんは1948年のお生まれですから、僕より5歳若いのですが、かつて5年ほど静嘉堂文庫のキューレーターをつとめていらっしゃいました。その意味では、この面白人間が僕の先輩なんです()

2021年10月1日金曜日

近藤先生の面白授業7

 

かつて尚美学園大学で中国美術史を担当していたとき、僕は教科書としてジュディ・オング著『ジュディの中国絵画って面白い』(二玄社)を使っていました。大学で教える機会が再びあったら――絶対ないと思いますが、同じ「面白」でも今度は『近藤先生の面白授業』を教科書として指定することにしましょう。そのときは『ジュディの中国絵画って面白い』と同じように、近藤さんの顔写真を表紙に刷り込んだバージョンを作ってくださいーーウケるか、はたまたブーイングか( ´艸`)

 ところが近藤さんは、面白授業をやっているだけではありません。いま僕は、近藤さんと南京大学の何慶先さんが共同で執筆し、献辞を添えて贈ってくれた『図絵宝鑑校勘與研究』(江蘇古籍出版社 1997年)という労作を書庫から引っ張り出して来て、改めてながめているところです。

東京美術俱楽部「美のまなざし」「東美特別展」2

  ここで「美のまなざし 東京美術倶楽部を彩った東京国立博物館所蔵の名品」という展覧会が開かれています。出陳されているのは、東京美術倶楽部とゆかりの深い東京国立博物館コレクションから選ばれた、国宝 2 点、重要文化財 3 点を含む 10 点の名品です。 もう一つの「東美特別展...