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2022年12月31日土曜日

鈴木其一筆「風神雷神図襖」9

 

それにちなんで、NHK文化センターから宗達筆「風神雷神図屏風」について講演してほしいというオファーを受けました。僕は宗達・光琳・抱一・其一という4点の風神雷神図を比較しながら、それぞれの魅力と琳派の図様継承について講演することにしました――まだ「口演」は使っていませんでした() そして最後に、どの作品に一番惹かれるかアンケートを取ろうと考え、聴講者に挙手を求めました。

当然、宗達屏風だろうと思っていたのですが、驚いたことにもっとも多く手が挙がったのは鈴木其一の襖だったのです。伊藤若冲ブームに象徴されるがごとく、日本人の美的感性が大きく変化していることを実感させられた一瞬でした。

2022年12月30日金曜日

鈴木其一筆「風神雷神図襖」8

 

2014年春、東京国立博物館で「開山・栄西ようさい禅師800年遠忌特別展 栄西と建仁寺」が開催されました。オーディオガイドは憧れの中谷美紀さんだったので、生まれてはじめて自腹で借りました() 

余談はさておき、建仁寺所蔵の俵屋宗達筆「風神雷神図屏風」が出陳されたことはいうまでもありません。というより、栄西禅師関係の寺宝を差し置いて、この宗達国宝屏風がメダマになっているような特別展でした。

2022年12月29日木曜日

鈴木其一筆「風神雷神図襖」7

 

安村さんのお墨付きを得て、自信のなかった僕の「光琳風神雷神二屏風説」は確信に変わりました。珍しくも今回は、若い研究者から批判されずにすんでホッとしたことでした()

天保4年(183338歳にして其一は上方への旅に出ました。この時の日記を子供の鈴木守一が写しており、京都大学付属図書館に「癸巳西遊日記」として所蔵されています。

このなかに鷲峯山金胎寺で襖4枚を描いたという記述があります。「風神雷神図襖」がこれに当たる可能性について、すでに玉蟲敏子さんが指摘しているのですが、饒舌館長もこの見解に心から賛意を表してきました。

2022年12月28日水曜日

鈴木其一筆「風神雷神図襖」6

 

抱一の写し間違いと考えるには、東博本と『光琳百図』本における雲の表現があまりにも異なっているからです。其一筆「風神雷神図襖」の雲は後者とほとんど同じですが、しかし自信はまったくありませんでした。

ところが畏友・安村敏信さんも早くから同じことを考えていて、静嘉堂@丸の内オープン記念展図録『響きあう名宝――曜変・琳派のかがやき――』に寄せたコラム「抱一の光琳観」でそれをはっきりと指摘したのです。いや、発行日はこのカタログの方が『國華』より早いわけですから、プライオリティは安村さんにあるんです‼


2022年12月27日火曜日

鈴木其一筆「風神雷神図襖」5

 


風神雷神というモチーフは、俵屋宗達から尾形光琳へ、さらに酒井抱一へと継承され、琳派の正統性を証明する家紋のような役目を担ってきました。其一もみずからこれを描くことによって、その系譜に連なろうとしたのでしょう。

其一は師の抱一ではなく、光琳の彩管になる東京国立博物館所蔵の「風神雷神図屏風」をもとにしたらしい――両神の描写からそう推測することができます。これが通説だといってもよいでしょう。しかし『光琳百図』に載るような光琳の別本があって、それによった可能性もないではないというのが饒舌館長の見立てです。

2022年12月26日月曜日

鈴木其一筆「風神雷神図襖」4

 

風神と雷神は異様な雰囲気を発散しています。それは何よりもまず、風神と雷神の顔に加えられた強い隈によって生み出されています。とくに白い肌に墨黒々と隈を入れられた雷神では、気味の悪さがいや増しています。

これに加わるのが、妖雲と呼びたいような黒い雲です。この妖雲のプロトタイプは初期の作品にも見られまるから、其一の美的感性によって生み出された個性的表現であるといってよいでしょう。気味が悪いなどというと、其一をおとしめているように感じられるかもしれませんが、ここにこそ其一独自の美意識が発露しているのです。またそれはカオスとも呼ぶべき幕末美意識の反映でもあったように思います。

2022年12月25日日曜日

鈴木其一筆「風神雷神図襖」3

 

「祝琳斎其一」の落款が、明らかに光琳の落款をまねたものである点に、其一の光琳へのなみなみならぬ私淑の態度が見られる。ただし絵は光琳や抱一のそれと異なり、灰味がかった独特の色調や肉身の隈取り、妖気を感じさせるような不思議なたらし込みなどによって、いかにも其一画らしいものとなっている。宗達に始まる「風神・雷神図」の闊達な世界の変貌の極みともいうべき終着点がここにある。

 辻惟雄さんの驥尾に付して、拙論「鈴木其一の画業」を『國華』1067号(1983年)に寄稿したのですが、もちろんこの襖絵にも言及せずにいられませんでした。今回の拙論には「しかしその後、実地調査を行なう機会もあったので、改めて國華アーカイブに登録しておこうと考えた次第である」なんてチョット格好をつけましたが……()


江戸東京博物館「江戸博×出光コレクション初共演 浮世へのいざない」4

   もっとも『肉筆浮世絵大観 3 < 出光美術館 > 』 に解説を担当した大久保純一さんは、 岩田秀行さんの教示に よると礼を尽くしつつ 、先の5代目岩井半四郎を初代岩井紫若 にあてて います。  満月を浮かべる青い夜空、川面に映る 月影や 往来する舟の影、役者や橋杭が地上に作...