2021年12月1日水曜日

第33回國華賞1

 


33回國華賞――仲町啓子さん

いつもならば、鹿島美術財団講演会が終ったあと、必ずレセプションがあるのですが、今回はコロナ禍のため取りやめとなり、酒仙館長としてはチョット残念でした() しかしこのお影で――いや、お陰で、朝日新聞社新館で行なわれた國華賞授賞式に、終了後すぐタクシーで駆けつけることができたんです。

今回は、山根有三先生に導かれつつ、長い間一緒に琳派研究をやってきた仲町啓子さんが、大著『光琳論』をもって國華賞正賞を受賞しました。峻厳なる研究者の佐藤康宏さんが激賞して止むことなき祝辞を捧げたのですから折り紙つき、もう饒舌館長が屋上屋を重ねる必要などないでしょう。

2021年11月30日火曜日

鹿島美術財団東京美術講演会13

 

 


 ついでながら李白「月下の独酌」にちなみ、『雲萍雑志』の著者とされてきた柳沢淇園の詩から、二日酔いが詠み込まれた一首を、入矢義高先生の『日本文人詩選』(中公文庫)からマイ戯訳で……。

   西域由来のザクロの実 洛陽名物 有[あり]の実を

   描いて贈らんハナムケに 旅路の無事を祈りつつ……

   酸いと甘いのメタファーが この絵のなかに隠れてる

   喉をうるおし二日酔い 醒ましてほしい君だけが

2021年11月29日月曜日

鹿島美術財団東京美術講演会12

李白「月下の独酌」

  酒壷 抱えて花の下 独り友なく飲んでたが

名月のぼり盃[はい]挙げりゃ 自分の影と三人だ

だが月 酒を飲むでなし 影 俺のまま動くだけ

「月さん 影さん 付き合えよ!! こんな楽しみ春だけだ」

 歌えば月はユラユラと…… 踊れば影はフラフラと……

 醒めてるうちは楽しいが 酔えばおたがいサヨウナラ

「飲み友達だ いつまでも!! 銀河のかなたでまた会おう!!

 いいなぁ!! 実にいいなぁ!! 李白1000首のベストワンは、何と言ってもこれでしょう。だからこそ、『中国詩人撰集』<李白>上・下の上巻劈頭に据えられているんです。マイ戯訳もケッコウうまくいってるかな() 6句目は字面のままに訳しましたが、李白の真意を思いやれば、「微醺のうちは楽しいが 酩酊すればサヨナラだ」ということになるかな?


2021年11月28日日曜日

鹿島美術財団東京美術講演会11

岩波文庫版『雲萍雑志』の表紙にはチャンと「柳沢淇園著」となっているのに、偽書とか仮託だなんて羊頭狗肉じゃないか――などといったら、森先生に対して失礼かな()

それはともかく、僕は「影法師問答の文」に関する岡戸さんのお話を、荘子胡蝶の夢や、江戸川柳「荘子のは夢が花野をかけ廻り」を思い浮かべながら聞いていました。あるいは老荘に惹かれていた李白の「月下の独酌」を反芻しながら、耳を傾けていました。

つまり「影法師問答の文」には、老荘的観念が強く働いているように思われたのです。『雲萍雑志』の本来の著者は、老荘思想や道教趣味の持ち主であったかもしれません。そこで「月下の独酌」を、またまたマイ戯訳で……。

 

2021年11月27日土曜日

鹿島美術財団東京美術講演会10


  最後の方で岡戸さんは、日本初期文人画家の一人、柳沢淇園の随筆といわれる『雲萍雑志』から、「影法師問答の文」を引用しました。しかし、酒仙館長の心に『雲萍雑志』の名が深く刻まれているのは、何といっても「飲酒の十徳」のせいですね()

○飲酒の十徳 礼を正し、労をいとい、憂いをわすれ、鬱をひらき、気をめぐらし、病をさけ、毒を解[]し、人と親しみ、縁をむすび、人寿を延[]ぶ。

『雲萍雑志』は古くから柳沢淇園の著作ということになっており、森銑三先生の校訂を経て岩波文庫に収められています。しかし先生の解説を読むと、淇園の著作ではなく、江戸後期の雑学者・山崎美成が、筆者不詳の随筆に柳沢淇園の名を冠して出版した偽書、あるいは仮託の書であった可能性が高いとのことです。

2021年11月26日金曜日

鹿島美術財団東京美術講演会9

 

 


 岡戸さんは「写真」の問題も取り上げました。なぜなら写真も立派な影だからです――だから写真を撮ることを撮影というんでしょう。写真――文字通りには「真を写す」近代の発明ですが、僕はスーザン・ソンダクの「現代においてあらゆるものは写真に撮られるために存在する」という名言を思い出しながら聞いていました。

これはインスタグラムの誕生を予言した言葉としてときどき引用されますが、岡戸さんの発表と関係づければ、もっと深い意味を読み取ることもできるように感じられたからです。つまり、現代ではあらゆるものの「真」つまり本質が求められている――しかしそれは写真と同じで、いくら求めてみても本質の幻影にすぎないのだ……。

2021年11月25日木曜日

鹿島美術財団東京美術講演会8

 


蘇東坡「湖上に飲めば初め晴れ後雨ふる」

  水面[みなも]の光キラキラと…… 天気がよければ素晴らしく

  ぼおっと翳[かげ]る山の峰 雨降りゃこれまた得も言えず

  もしも西湖を絶世の 美人の西施にたとえれば

  バッチリメイクと薄化粧 どっちもいいのとよく似てる

第33回國華賞1

  第 33 回國華賞――仲町啓子さん いつもならば、鹿島美術財団講演会が終ったあと、必ずレセプションがあるのですが、今回はコロナ禍のため取りやめとなり、酒仙館長としてはチョット残念でした ( 笑 )  しかしこのお影で――いや、お陰で、朝日新聞社新館で行なわれた國華賞授賞式...