2017年7月28日金曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」2


①曜変天目については、もうずいぶんアップしてきましたので、ここでは僕に曜変虹蜺邪淫説を思いつかせてくれた聞一多のことを、紹介することにしましょう。聞一多の名前は、桑原武夫の名著『一日一言』<岩波新書>で早くから知っていました。715日の条に、「この日、昆明で国民党のテロに殺された。詩人にしてかつ文学研究者。その研究は卓抜な見識に富む」として登場するからです。桑原武夫は聞一多の「臧克家氏への手紙」を引用していますが、あまりにも多くの古文献に恵まれた中国知識人の苦悩や反発は、かの魯迅も吐露するところでした。

私は10年余りも古書のなかで暮して、確信ができました――わが民族、わが文化の病根がはっきり分かったのです。そこでそれの処方箋を書く気になりました。それの方式が、文学史(詩史)になるか、または詩(史詩)になるかは分からないし、どれにしても駄目かもしれません。決定的な処方箋ができ上がるかどうかは、環境がそれを許すか否かにかかっています。しかし、私としては、このやり方に誤りはないと信じています。実は私はあの古書の山を誰にも増して憎むものです。憎むからこそ、そいつをはっきりさせずには済ませないのです。

 

2017年7月27日木曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」1


静嘉堂文庫美術館「おしゃべりトーク 私の好きな茶道具ベスト10」(723日)

 いま開催中の企画展「珠玉の香合・香炉展」についてはすでにアップしたところですが、お陰をもちまして、予想をはるかに超えるお客様に来館していただいています。813日(日)までですので、まだの方は一刻も早くご来館くださいませ!!

 この企画展にちなみ、三井記念美術館の赤沼多佳さんをゲストにお招きして、二人が各々「私の好きな茶道具ベスト10」を選んで、掛け合いトークをすることになりました。僕はすべて静嘉堂文庫美術館コレクションから選ぶことにして、次の10点をリストアップしました。

①曜変天目 ②白磁刻花蓮花文輪花形水指 ③長次郎「黒楽茶碗(紙屋黒)」 ④交趾四方魚文香合 ⑤尾形光琳「住之江蒔絵硯箱」 ⑥原羊遊斎「片輪車螺鈿蒔絵大棗」 ⑦因陀羅「禅機図断簡」(智常禅師)」 ⑧梅渓図 ⑨伝紀貫之「寸松庵色紙」 ⑩伝狩野元信筆「猿曳棚」

 

2017年7月26日水曜日

三菱一号館美術館「レオナルド✖ミケランジェロ展」3


画家は、まず優れた師匠の手になる素描を模写することに習熟しなければならない。彼の先生が、その手習いができたと判断したら、次いで優れた立体物を模写することに習熟しなければならないが、その規則については、立体物の模写についての個所で述べよう。

これは一種の粉本主義ではありませんか。粉本主義は決して江戸狩野の専売特許なんかじゃなく、西洋にもあったし、ダ・ヴィンチも認めていたんです。橋本雅邦が『國華』3号に寄稿した「木挽町画所」で述べているような、「粉本に始まり粉本に終わる」といった教育法とは異なるものと想像され、おそらく最終的には実物写生に進んだのでしょう。しかしスタートは、あくまで師匠の手になる素描であったのです。

2017年7月25日火曜日

静嘉堂「曜変天目」諸説7



ただ、このご本を通読してみると、『旧約聖書』に登場するノアの虹をはじめとして、西洋では虹を瑞兆とか正義を象徴するものとみる思想が強く、不吉とか邪悪なものと考える傾向は薄いように思われましたが……。

虹といえば、先日の『朝日新聞』に、今夏の朝日放送(ABC)高校野球応援ソング「虹」を作詩作曲したシンガー・ソングライターの高橋優さんが紹介されていました。♪こぼれた涙に日が差せば 虹がかかるよ♪ 「虹になってやろうという意思が、大人たちが感じる『青春』『ときめき』『美しさ』なんじゃないか」と感じて、球児から受けた前向きなエネルギーを歌詞に込めたそうです。

♪虹を待つな 虹になれ♪――虹蜺邪淫説の対極にある、じつに美しいフレーズですね。もし簡単なコード進行なら、そのうち弾き語りにチャレンジしてみることにしましょう。もうウッディー・リヴァーで森さんとやる機会はなさそうですが!?

2017年7月24日月曜日

静嘉堂「曜変天目」諸説6



その後、京都大学の岡田温司[あつし]さんから、『虹の西洋美術史樹脂』<ちくまプリマー新書>をいただきました。これまたオススメ本ですが、曜変虹蜺邪淫説の観点からとくに興味深いのは、第4章「女王の虹――権力の象徴」のなかの「虹と蛇」です。宮廷肖像画家アイザック・オリヴァーがエリザベス一世を描いた「虹の肖像」を取り上げて、虹および蛇の両義性を分析しているからです。

岡田さんによると、古今東西のさまざまな神話が物語っているように、古くから蛇(龍)は虹とも密接な関係を保ってきました。たとえば、オーストラリアの先住民アボリジニは、虹と蛇の合体した図像――「虹蛇」<レインボーサーペント>を、先史時代からずっと受け継いできたそうです。

この図像は、雨や水と結びついて、自然のもつ創造的かつ破壊的な力を象徴しています。虹も幸福のシンボルですが、同時に不吉なものともなりえます。このような自然の両義的な力が、水とのかかわりが深い虹と蛇の両方に投影され、合体したのだというのが岡田さんの指摘です。

2017年7月23日日曜日

静嘉堂「曜変天目」諸説5



このような美術だけでなく、天皇からドラえもん・サザエさんまでを論じて実におもしろく、また対応英訳付きとなっていますので、外国人に日本文化の歴史や社会的背景を知ってもらいたいなぁと思うとき、とても便利なオススメ本ですよ。

もう一つ、高橋さんは『国宝への旅② 都雅檀風』<NHKライブラリー>から「曜変天目茶碗」のコピーも送ってくれました。そこには、当時における中国の人々の感性が、爬虫類的なイメージを与える斑点を気味の悪いものとして敬遠していた可能性が言及されていました。

つまり、僕と同じようなことを考えた方はいろいろといらっしゃったわけです。しかし私見は、聞一多の『中国神話』<平凡社・東洋文庫>から思いついた曜変虹蜺邪淫説である点に、私見たるゆえんがあるのですが!?

2017年7月22日土曜日

静嘉堂「曜変天目」諸説4



僕は山種美術館館長・山﨑妙子さんの好意で、その館の仕事もさせてもらっているのですが、理事会があるたびに高橋瞳さんとお会いし、ひとしきり美術談義に花を咲かせます。高橋さんは高橋公認会計士事務所の所長さんで、山種美術館の監査役をつとめていらっしゃるのですが、お話をしていると、日本文化に対する飽くなき好奇心と豊かな教養を身に付けたジェントルマンという感じを強くします。

談たまたま曜変天目に及んだとき、私見とマイブログのことを申し上げると、ご著書『日本文化入門』(小学館)を送ってくださいました。早速に開くと、「茶道と曜変天目茶碗」という一節があります。「この茶碗で茶を点てることは想像しがたく、もしそのような機会にめぐり合った時は、目から天目の星が飛び出る気分になるのではないか」というユーモラスな記述とともに、最高の曜変天目として静嘉堂文庫美術館の一碗が紹介されています。

 

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」2

①曜変天目については、もうずいぶんアップしてきましたので、ここでは僕に曜変虹蜺邪淫説を思いつかせてくれた聞一多のことを、紹介することにしましょう。聞一多の名前は、桑原武夫の名著『一日一言』<岩波新書>で早くから知っていました。 7 月 15 日の条に、「この日、昆明で国民...