2018年11月18日日曜日

東京国立博物館「斉白石」1


東京国立博物館「日中平和友好条約締結40周年記念特別企画 中国近代絵画の巨匠 斉白石」<1225日まで>(1116日)

 



斉白石――すばらしい中国の近代画家ですね。はじめて僕が「いい画家だなぁ」と思ったのは、山形県寒河江市のT家で、「蝦図」と「雛鶏図」を見たときでした。東北大学で教鞭をとっていた辻惟雄さんが、「江戸時代絵画における中国画の影響」と題する科学研究費補助金を得て研究チームを立ち上げたとき、僕もメンバーに誘ってくれました。その調査旅行でT家をお訪ねした時のことです。


調査カードを引っ張り出してみると、みんなでT家をお訪ねしたのは昭和47年(19721120日、46年も前のことになります。ものすごく寒い日でした。もっとも11月中旬といえば、寒河江では当たり前なのかもしれませんが……。


T家では、文人画を中心にたくさんの優品を拝見しましたが、この2幅はとくに印象深い作品でした。ちょっと黄色くなっているカードには、「斉白石の画は余り見たことがないが、この二点は実に素晴らしい作品なり」などと書いてあります。そのころは僕も真面目だったらしく、最近は省略してしまう縦横の寸法まで、「136.2×33.5」「66.7× 33.2」としっかり記入しているじゃーありませんか()

2018年11月17日土曜日

出光美術館・与謝蕪村筆「夜色楼台図」


出光美術館・与謝蕪村筆「夜色楼台図」<1118日まで>(1116日)

 いま出光美術館では、江戸時代絵画の<雅>と<俗>に焦点をしぼって、「江戸絵画の文雅」<1216日まで>と題するオススメの企画展が開催されています。これに錦上花を添えているのが、先年国宝に指定され、改めて話題を集めた与謝蕪村の「夜色楼台図」です。その前に立ってじっと観賞すれば、日本絵画の本質が、たちどころに理解されてしまうのです。

雪景という感傷的主題、その叙情的にして象徴的な表現性、造形と文学のあえかな交響など、日本美術のエッセンスが、この一幅にすべて抜かりなく詰め込まれているといって過言じゃありません。

しかし、そのコレクターから許された特別出品はわずかに2週間、つまり18日(日)までの残り2日間です。皆さん、図版ではお馴染みでしょうが、何が何でも本物を見なくては、日本絵画を、いや、日本美術を、いやいや、日本文化を語ることができなくなってしまいますよ!! 

いま僕は、「行路の画家蕪村」の続編を『國華』に寄稿すべく書き進めているところです。しかし静嘉堂文庫美術館の仕事が忙しく、その他のおしゃべりトークなどもあり、さらに盲腸炎の後遺症や風邪で調子もイマイチのため、なかなか筆が進みません。

しかし今日会場で「夜色楼台図」をじっとながめていると、どこからか「そんなのみんな口実だろう。後期高齢者とはいえ、老躯に鞭打ってもうちょっと頑張れ!!」という蕪村の叱声が聞こえたような気がしたのでした(!?)

京都国立博物館「京の刀」13


このような日本の城の石垣に示される特有な造形は、ほんの一例に過ぎないが、これによっても、日本の意匠の美しさは、直線的構成の外に、曲線的構成にも特有のものがあることがわかる。それは日本の環境、風土、材料、構造などに関連すると同時に、私たちの造形的好み、或いは美意識に密接な関係を持つものと信ずる。本稿は、そのような日本の建築における曲線的な意匠を問題として、それを西洋や中国の造形と対比しながら、その造形的特性を明らかにしたいというのが目的である。

 先生はこの目的に沿って多くの実例を示しながら論証をすすめ、ある時は自由なイマジネーションの飛翔を楽しむがごとくに試みています。

以下、「前方後円墳とピラミッド」「軒の『そり』とその源流」「軒の『そり』の起源と竹構造」「軒の『そり』とテント起源説」「家形ハニワと軒の『そり』」「『そり』の意匠的表現」「平安時代の屋根の『そり』」と続いて、最後に「書と軒の曲線」をもって終わります。日本美術の特質や素性を考える際にも、必ず参照しなければならない名論文だと思います。


2018年11月16日金曜日

京都国立博物館「京の刀」12


 その「おもてなし」展をアップしたときも言及しましたが、この問題を考えるとき必ず読まなければならないのは、谷口吉郎先生の『日本建築の曲線的意匠・序説』<日本文化研究8>(新潮社 1960年)という論考です。その時はただ先生のお名前をあげただけでしたが……。確認はしていませんが、『谷口吉郎著作集』にも収められているにちがいないと思います。

僕が持っているのは50ページほどのA5版、小冊子にちかい本ですが、その内容はじつに示唆的です。まず先生は、「直線と曲線の建築意匠」と題して第一章とし、この問題の在りかを明らかにしています。そして、この間の熊本大地震で被害を受けた熊本城の石垣を取り上げて考察し、この論考の目的を次のようにまとめています。
 
  高級な整然とした石積みの意匠は、むしろ日本では古代の建築に多い。法隆寺の金堂や五重塔は、七世紀の古い建築であるが、規則正しい二段の石壇の上に建っている。それは中国の城壁の如く、外壁面は直線的で丸味を持たない。これは飛鳥時代の造形感覚で、中国の影響によるものであった。 

2018年11月15日木曜日

京都国立博物館「京の刀」11


ところが中国刀にも、「反り」をもつものがあるのですが、その「反り」は日本刀の「反り」とかなり違っています。日本刀に比べると、もっと強く反っているのです。僕は日本建築における軒の微妙な反りと、中国建築における軒の強い反りを思い出しながら、両者を見比べていました。

もっとも、日本刀の微妙な反りとよく似た反りをもつ中国刀もありましたが、中国刀はより一層力強く、日本刀の鋭いけれどもちょっと華奢な感じがないのです。柳葉刀と同じく、重さで叩き切るといった武器本来の猛々しさがそのままにあらわれているみたいなんです。やはり、益荒男振りと手弱女ぶりの違いがあるんじゃないかなぁと思われたことでした。

2018年11月14日水曜日

京都国立博物館「京の刀」10


 以下は、今回書き加えた補足です。去年夏、台南の奇美美術館で「おもてなし 宴のうつわ・茶のうつわ 静嘉堂蔵日本陶磁名品展」を開催いたしました。すでに「饒舌館長」にアップしたところです。その奇美美術館コレクションの一つに武器あり、その兵器ホールには世界各地の武器が展示されていて、とても興味深く感じたのです。

日本刀も15振ほど展示されていて、その美しい「反り」に改めて見入ってしまいましたが、もちろん中国刀もたくさん陳列されていて、容易に比較することができるのです。日本でいえば槍にちかい青龍偃月刀――俗にいう青龍刀のほか、柳葉刀(Liuyedao)がたくさん展示されていました。

柳葉刀というのは、現在中国で行われている剣舞や剣をもって行なう太極拳でも一般的に用いられるもので、もっともポピュラーな中国刀です。もちろん柳の葉に似ているところから、柳葉刀と名づけられたのでしょう。これは刃の方がカーブしていますが、ミネの方はほぼストレートです。つまり「反り」とはいえません。

2018年11月13日火曜日

京都国立博物館「京の刀」9


多くの匠[たくみ]や農民が ともに残留したために

今に至るも日本の 器物工芸みな精巧

唐の時代にゃ貢物 持ってしばしば遣ってきた

地位ある人はほとんどが 詩も文章も巧みなり

徐福が日本へ行ったのは 焚書坑儒がやられる前

だから本土にゃない『書経』 百篇そろって遺るはず

こちらじゃ所持さえ厳禁で 伝えることも許されず

ゆえに蝌蚪文字[かともじ]読める人 一人もおらず中国に

孔子が編んだ聖典を 持っているのは異民族

♪海は広いな 大きいな♪ その港にも近づけぬ

それを思うと胸痛み 涙こぼれる ひとりでに

錆びちゃう短刀そんなもん 比べられるか!! 聖典と 

東京国立博物館「斉白石」1

東京国立博物館「日中平和友好条約締結 40 周年記念特別企画 中国近代絵画の巨匠 斉白石」< 12 月 25 日まで>( 11 月 16 日)   斉白石――すばらしい中国の近代画家ですね。はじめて僕が「いい画家だなぁ」と思ったのは、山形県寒河江市の...