2022年12月26日月曜日

鈴木其一筆「風神雷神図襖」4

 

風神と雷神は異様な雰囲気を発散しています。それは何よりもまず、風神と雷神の顔に加えられた強い隈によって生み出されています。とくに白い肌に墨黒々と隈を入れられた雷神では、気味の悪さがいや増しています。

これに加わるのが、妖雲と呼びたいような黒い雲です。この妖雲のプロトタイプは初期の作品にも見られまるから、其一の美的感性によって生み出された個性的表現であるといってよいでしょう。気味が悪いなどというと、其一をおとしめているように感じられるかもしれませんが、ここにこそ其一独自の美意識が発露しているのです。またそれはカオスとも呼ぶべき幕末美意識の反映でもあったように思います。

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