また「大日本名将鑑」に先立って、芳年は明治10年、たくさんの西南戦争錦絵を発表しています。これこそ歴史画ですが、その人気だけを当て込んだような作り方は、完全に浮世絵だといってよいでしょう。
国家意識とまったく関係のない浮世絵の伝統から、歴史画「大日本名将鑑」が生まれている点がとても興味深く感じられます。しかしこれが浮世絵ではなく、歴史画であることは、「大日本」というタイトルに象徴されています。しかも菅原真弓さんによると、「ダイニホン」じゃ~なく、「ダイニッポン」と読むのが正しいようです。
明治時代の日本人は歴史画を求めました。それが歴史画の流行を生んだことは間違いありません。その理由を求められるなら、模範解答は近代国家意識の誕生と高揚ということになるでしょう。