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2017年7月31日月曜日

岡田秀之『長沢芦雪』1




岡田秀之『かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』(新潮社<とんぼの本>)


 嵯峨嵐山日本美術研究所の岡田秀之さんが、かの奇想の画家・長沢芦雪をモチーフに、絶対のオススメ本を著わしました。6年前、岡田さんが企画開催した特別展「長沢芦雪 奇は新なり」は、改めて芦雪の魅力を僕たちに教えてくれたものでした。


そのとき僕も声をかけられ、当時MIHO MUSEUMの館長をつとめていらっしゃった辻惟雄さんと、この4月から僕のあと京都美術工芸大学プレジデントを引き受けてくれた冷泉為人さんと3人で、芦雪をサカナに鼎談をやったことを懐かしく思い出します。


鼎談の前に、岡田さんを含めた4人で会場を回りながら、僕が「こんなすごい芦雪、どこで見っけたの? 俺もまったく知らなかった傑作だ!!」といった調子で「饒舌館長」をやっていたら、ガードマンの美しいお嬢さんから、「お静かに願います!!」と一本取られたのも、懐かしい思い出、いや、ちょっとほろ苦い思い出です。

その岡田さんが、さらに多くの人に芦雪というシャングリラに遊んでもらいたいと、満を持して世に問うたのが、この「とんぼの本」です。「応挙よりウマイ 若冲よりスゴイ 伝説の絵師のすべて」という腰巻も、岡田さんの意気込みを語っているようです。もっとも、考えたのは担当編集者の黒田玲子さんかもしれませんが……。

 

2017年7月30日日曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」4<白磁水指>2


それは「鳥の子」と呼ばれてきましたが、つまり「鳥の子紙」――鳥の子色をした紙の意味です。鳥の子色とは、ニワトリの卵の殻のような淡黄色のことです。白磁といっても、それは純白じゃありません。もちろん定窯磁器は、牙白と呼ばれる象牙に似たクリーム色である点に特徴があるわけですが、わが国においては、このような温かみのある白磁をとくに「鳥の子」と呼んで大切にしてきました。

近代以前、定窯のような華北の陶磁がわが国へ将来されることは少なかったそうですが、あまりにも厳しい白磁は敬遠されることが多かったのでしょう。それは龍泉窯の青磁や、景徳鎮の染付や古染付の方を日本人が好んだ現象と、表裏の関係に結ばれているような気がします。しかしこの深鉢は「鳥の子」ゆえに、やさしい白磁として、前田家のお蔵に納まることになったのでしょう。

唐時代、中国の磁器は、華北の邢窯や定窯が白磁中心となり、江南の越窯が青磁中心となったので、「南青北白」と言われました。しかし、宋時代になっても、定窯が白磁中心であり、龍泉窯が青磁中心であったことを考えれば、やはり南青北白の伝統は生きていたともいえるでしょう。

この南青北白という観点からみると、古く日本人は、北白よりも南青の方に多く惹かれたように思われます。それは北宋山水画より、南宋山水画を好んだ美意識と、どこかでつながっているようにも感じられるのですが……。

2017年7月29日土曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」3<白磁水指>1


 ②白磁刻花蓮花文輪花形水指は中国・定窯の逸品、北宋から金にかけての制作と推定されています。もともとは深鉢として中華料理を盛り、皇帝の豪華な食卓を飾ったにちがいありません。麻婆豆腐か、青椒肉絲か、はたまた酢豚でしょうか――僕が大好きな家常菜なんか皇帝には出さないような気もしますが……。しかし少なくともデザートの杏仁豆腐なら、この深鉢にピッタリですし、きっと皇帝も喜ぶでしょう!?

いずれにせよ我が国では、これに塗り物の蓋を用意して、茶の湯の水指に使ったらしく、伝えてきた加賀藩前田家でも水指と呼ばれてきました。伝世品であるこの作品以外に、このような使われ方をした定窯磁器があるのでしょうか。もしあるとすれば、近代になって、この水指にならったものにちがいありません。

瓜のような縦筋を入れた優美なフォルムや、内外に加えられた片切り彫りによる蓮花文のおおらかさ、きわめて薄い陶胎を削り出すテクニックなど、非の打ちどころがありません。しかし僕が、もっとも興味を持ったのはその肌の色です。

2017年7月28日金曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」2<曜変天目>


①曜変天目については、もうずいぶんアップしてきましたので、ここでは僕に曜変虹蜺邪淫説を思いつかせてくれた聞一多のことを、紹介することにしましょう。聞一多の名前は、桑原武夫の名著『一日一言』<岩波新書>で早くから知っていました。715日の条に、「この日、昆明で国民党のテロに殺された。詩人にしてかつ文学研究者。その研究は卓抜な見識に富む」として登場するからです。桑原武夫は聞一多の「臧克家氏への手紙」を引用していますが、あまりにも多くの古文献に恵まれた中国知識人の苦悩や反発は、かの魯迅も吐露するところでした。

私は10年余りも古書のなかで暮して、確信ができました――わが民族、わが文化の病根がはっきり分かったのです。そこでそれの処方箋を書く気になりました。それの方式が、文学史(詩史)になるか、または詩(史詩)になるかは分からないし、どれにしても駄目かもしれません。決定的な処方箋ができ上がるかどうかは、環境がそれを許すか否かにかかっています。しかし、私としては、このやり方に誤りはないと信じています。実は私はあの古書の山を誰にも増して憎むものです。憎むからこそ、そいつをはっきりさせずには済ませないのです。

 

2017年7月27日木曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」1


静嘉堂文庫美術館「おしゃべりトーク 私の好きな茶道具ベスト10」(723日)

 いま開催中の企画展「珠玉の香合・香炉展」についてはすでにアップしたところですが、お陰をもちまして、予想をはるかに超えるお客様に来館していただいています。813日(日)までですので、まだの方は一刻も早くご来館くださいませ!!

 この企画展にちなみ、三井記念美術館の赤沼多佳さんをゲストにお招きして、二人が各々「私の好きな茶道具ベスト10」を選んで、掛け合いトークをすることになりました。僕はすべて静嘉堂文庫美術館コレクションから選ぶことにして、次の10点をリストアップしました。

①曜変天目 ②白磁刻花蓮花文輪花形水指 ③長次郎「黒楽茶碗(紙屋黒)」 ④交趾四方魚文香合 ⑤尾形光琳「住之江蒔絵硯箱」 ⑥原羊遊斎「片輪車螺鈿蒔絵大棗」 ⑦因陀羅「禅機図断簡」(智常禅師)」 ⑧梅渓図 ⑨伝紀貫之「寸松庵色紙」 ⑩伝狩野元信筆「猿曳棚」

 

2017年7月26日水曜日

三菱一号館美術館「レオナルド✖ミケランジェロ展」3


画家は、まず優れた師匠の手になる素描を模写することに習熟しなければならない。彼の先生が、その手習いができたと判断したら、次いで優れた立体物を模写することに習熟しなければならないが、その規則については、立体物の模写についての個所で述べよう。

これは一種の粉本主義ではありませんか。粉本主義は決して江戸狩野の専売特許なんかじゃなく、西洋にもあったし、ダ・ヴィンチも認めていたんです。橋本雅邦が『國華』3号に寄稿した「木挽町画所」で述べているような、「粉本に始まり粉本に終わる」といった教育法とは異なるものと想像され、おそらく最終的には実物写生に進んだのでしょう。しかしスタートは、あくまで師匠の手になる素描であったのです。

2017年7月25日火曜日

静嘉堂「曜変天目」諸説7



ただ、このご本を通読してみると、『旧約聖書』に登場するノアの虹をはじめとして、西洋では虹を瑞兆とか正義を象徴するものとみる思想が強く、不吉とか邪悪なものと考える傾向は薄いように思われましたが……。

虹といえば、先日の『朝日新聞』に、今夏の朝日放送(ABC)高校野球応援ソング「虹」を作詩作曲したシンガー・ソングライターの高橋優さんが紹介されていました。♪こぼれた涙に日が差せば 虹がかかるよ♪ 「虹になってやろうという意思が、大人たちが感じる『青春』『ときめき』『美しさ』なんじゃないか」と感じて、球児から受けた前向きなエネルギーを歌詞に込めたそうです。

♪虹を待つな 虹になれ♪――虹蜺邪淫説の対極にある、じつに美しいフレーズですね。もし簡単なコード進行なら、そのうち弾き語りにチャレンジしてみることにしましょう。もうウッディー・リヴァーで森さんとやる機会はなさそうですが!?

中近東文化センター を訪ねてみよう❣❣❣3

   中近東における国際的・民族的諸事情は、単に現在の問題だけを分析してみても理解できません。過去数千年にわたる中近東の歴史的発展の跡を顧み、そのよって来たるゆえんを明らかにする必要があります。     欧米における中近東研究はその歴史は古く、その成果はまことに偉大なものがありま...