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2017年9月30日土曜日

東京国立博物館「フランス人間国宝展」2


 この「フランス人間国宝展」は、フランス人間国宝の認定を受けた13名と、「手の賢さに捧げるリリアンヌ・ベタンクール賞」という賞を受けた2名、計15名の工芸作家による作品およそ230件を紹介する、本邦初の特別展です。

フランスの美術や文化行政から多くを学んできた日本が、人間国宝という国家認定システムをフランスにはじめて教えてあげたんだという点に、僕は得も言えぬ誇りを感じるとともに、これで若干の恩返しができたような気持ちになります。

もちろん僕も初めて聞く名前、はじめて見る作品ばかりで、深く心を動かされましたが、わが国人間国宝の作品に比べると、やはり独創性や革新性、あついはアートとしての要素がすぐっているように感じられました。

 「僕の一点」はジャン・ジレルさんの陶器です。ジレルさんは14歳で陶芸を初体験したものの、やがて画家になるための勉強を始めました。しかし1975年、28歳のとき、中国・宋代の陶磁器に深く心を動かされ、陶芸に集中することを決意します。2008年には、陶芸家である奥様と一緒にアトリエを開き、世界的活躍を続けています。

2017年9月29日金曜日

東京国立博物館「フランス人間国宝展」1


東京国立博物館「フランス人間国宝展」<1126日まで>

 静嘉堂文庫美術館が人間国宝・室瀬和美さんに大変お世話になっていることや、個人的にも兄事していることについては、以前「饒舌館長」にアップしたとおりです。この人間国宝というのは通称で、正しくは重要無形文化財保持者といいます。

演劇、音楽、工芸技術などなど、美術工芸品のような触覚的形態をもたない文化的所産で、歴史上や芸術上価値の高いものを無形文化財といいます。そのうち特に重要なものは、重要無形文化財として文化庁、つまり国によって指定されることになります。

これを優れてみごとに体現できる人、あるいは詳細に理解した上で正しく修得した人が、重要無形文化財保持者として認定される仕組みになっています。それにしても、「人間国宝」とはうまいネーミングを考えたものですね。

これにならい、1994年、フランスで「メートル・ダール」という称号が作られました。日本では「フランス人間国宝」と呼んでいるわけです。これはフランス文化省により、伝統工芸の最高技術者に授与される称号で、技術の熟練度や制作方法の希少性、技術的革新への貢献度などが考慮されて認定されるそうです。これに選ばれた人は、自身のワザを弟子に伝え、受け継がせなければなりません。

2017年9月28日木曜日

佐藤礼奈「トリビュート琳派」3


去年、僕はデモを聴いて、早速オマージュを捧げることにしました。そのお礼でしょうか、先日、佐藤さんがわざわざ静嘉堂文庫美術館を訪ねて来てくれました。京都美術工芸大学時代、ずいぶんお世話になった『京都新聞』にも、大きく取り上げられたとのこと、我がことのようにうれしく感じました。

「トリビュート琳派」ミュージアム・コンサートを、細見美術館館長・細見良行さんの許しを得て開催する予定にしていたところ、先日の台風でキャンセルせざるを得なかったとのことでした。残念無念!! 琳派美術館とたたえられる細見美術館ほど、これにふさわしい美術館はほかにないでしょう。いつの日か、実現することを祈ってやみません。

細見美術館3代目にあたる良行さんとは、本当に親しくさせてもらってきました。最初に生涯の友となるだろうと確信したのは、昭和58年のことでした。その11月に、ニューオーリンズ美術館でカート・ギター博士の日本絵画コレクション展「錦秋万葉」が開催され、それを記念して国際シンポジウムが企画されました。

発表を依頼された僕は、宗達屏風の構図について私見を述べたのですが、それが終わったあと、良行さんはテキサス・フォートワースのキンベル美術館へ一緒に行こうと誘ってくれました。アメリカ留学中であった良行氏さんは英語が堪能で、僕の航空券の変更などもすべてやってくれました。それ以来の親友です。細見美術館で「トリビュート琳派」コンサートを是非やってほしいなぁと思うのは、良行さんとのこんな関係にもよるところなんです。

2017年9月27日水曜日

佐藤礼奈「トリビュート琳派」2


去年3月発表したKyoto iPopsのファースト・リリースは、「千年のコンチェルト」でしたが、セカンド・リリースとして発表したのが「トリビュート琳派」です。琳派の酌めども尽きぬ魅力を、音楽に昇華させたCDアルバムです。佐藤さん作曲のメロディアスではないメロディーと不思議なリズム、豊かに響き渡るヴォーカルと口上は一度聴いたら忘れられません。

大阪芸術大学の太田聖二さんが作詩を担当、琳派400年の歴史を、わずか6曲のうちに凝縮してしまいます。俵屋宗達や尾形光琳の美のキモを象徴的にとらえた歌詞を追っていけば、もう僕の拙文集である『琳派 響きあう美』なんか、まったく読む必要がなくなってしまいます。

「僕の一点」はやはり「想い膨らむ~『紅白梅図屏風』観~」ですね。目をつぶって曲に身をゆだねていると、光琳畢生の傑作「紅白梅図屏風」が眼前に現れてきます。佐藤さんや太田さんが、いくら愛や恋に偏りがちな現代のポップスから距離を置こうとしても、これだけはかのフロイト的イコノロジーからどうしても逃れられなかったようですね。こんな点からも、小林太市郎という美術史家のすごさが改めて思い起こされるのです。

 

2017年9月26日火曜日

佐藤礼奈「トリビュート琳派」1


 
 京都美術工芸大学時代、加納剛太さんとお知り合いになりました。加納さんは半導体工学の大家で、松下電器――いまのパナソニックにお勤めになったあと、高知工科大学などで研究と教育に従事、「起業工学」という新しい学問を興されました。その後、京都工芸繊維大学大学院でも学生指導にあたられたので、その関係からお近づきになる機会に恵まれました。

その加納さんから紹介されたのが佐藤礼奈さんです。佐藤さんは京都をモチーフにしたポップスを発表して、注目を集めるシンガー・ソングライターです。佐藤さんはバンドのヴォーカルで鍛えたあと、5年前からソロ活動を開始しました。一般に受けいれられやすい愛や恋に偏りがちなコンテンポラリー・ポップスからの革新を目指し、innovationの頭文字から取った<サトレナiPop研究所>を主宰しています。

しかも、ヤングから僕たちまで、ジェネレーションを超えて心を震わすような歌詞を生かした曲作りを理想にしたいと語っています。

2017年9月25日月曜日

ネコ絵に書き加えられたオマージュ3


二つ返事で引き受けたことは、言うまでもありませんが、今村先生がお書きになった『猫談義』を読まずして、沈南蘋や徽宗のネコを語ることは、とてもできそうにありません。早速、アマゾンで検索すると一件ヒット、即「1クリックで買う」ことと相成りました。

案の定、ものすごく濃い内容です。東方書院発行の月刊誌『東方』に連載した文章を中心にまとめた300ページほどの本ですが、今村先生の博覧強記振りに、改めて驚かないではいられません。

いや、博覧強記などというと失礼に当るかもしれません。先生は「あとがき」の5ページにわたって参考文献を挙げ、このほか本文中に使用した文献367部について、別に索引を作って出典を明らかにしています。一昨年出版した拙著『琳派 響きあう美』のことを思うと、忸怩たるものがありますが、今さらどうしようもありません。

それはともかく、『猫談義』を送ってくださった岩滝さんは、本当に本が好きな本屋さんらしく、この本についての長い紹介文をみずから書いて同封してくれました。これまでネットでずいぶん本を買いましたが、こんなオタク本屋さん――いや、愛書家本屋さんははじめてです。 

心を深く動かされた僕は、アマゾンの質問機能を使って、お礼メールを送りました。すぐに返メールが来たのですが、それによると、岩滝さんは美術にも興味をお持ちになっているとのこと、とてもうれしい気持ちになったことでした。

これから時々、この『猫談義』からおもしろいネコの詩や話を紹介していくことにしたいのですが、まず初めは、やはりこれまで何度も「K11111のブログ」に登場してもらっている陸游です。

今村先生は、第一章の「縁起」を陸游の「十一月四日風雨大作」(『剣南詩集』巻26)で締めくくっています。もちろん先生は、原文と読み下しに現代語訳を添えて完璧を期しているのですが、このブログではいつものように戯訳で紹介することにしましょう。

ちなみに、陸游のネコ詩を全部知りたくて、『陸游集』全5冊を買っちゃったことはすでにアップしたとおりですが、これは1976年の中華書局版です。実はこれと同じ『陸游集』を先生も使っています。先生は必ず出典をちゃんと書いてくれるので、こんなことまで分かっちゃうのです。

風吹き荒れる川と湖[うみ] 雨が降ってて村暗く
周りの峰々山鳴りし 逆巻く波涛は吠えまくる
柴がチョロチョロ燃える部屋 粗末な毛氈[もうせん]――でも温[ぬく]い
俺はメロメロ・ネコチャンと 門 出ず家に閉じこもる

2017年9月24日日曜日

ネコ絵に書き加えられたオマージュ2


 かつて何かの必要があって、唐の段成式が撰した『酉陽雑俎』(東洋文庫)を手に取ったことがあります。『酉陽雑俎』はさまざまなおもしろい話を集めた逸話集のような本です。その翻訳者として、今村与志雄先生のお名前が深く胸底に刻まれました。

その博覧強記ぶりは、愛読する『酒の肴』や『抱樽酒話』を書いた青木正兒と甲乙つけがたく、ただただ感嘆を久しゅうするばかりでした。お二人の学風はかなり違うと思いますが、博覧強記という点では軌を一にしています。

その今村先生に『猫談義 今と昔』という名著があることはどこかで聞いていましたが、美術史の論文やエッセーを書くために絶対必要というわけでもなかったので、ネコ派の僕もそのままにしていました。

ところが今秋、静嘉堂文庫美術館で明清画名品展を開くことが、去年早くに決まりました。当然、我が館が誇る沈南蘋の名品「老圃秋容図」にも登場してもらわなければなりません。これにちなんで、ネコの絵に関する館長おしゃべりトークをやってほしいと、担当の大橋美織さんから頼まれました。