二つ返事で引き受けたことは、言うまでもありませんが、今村先生がお書きになった『猫談義』を読まずして、沈南蘋や徽宗のネコを語ることは、とてもできそうにありません。早速、アマゾンで検索すると一件ヒット、即「1クリックで買う」ことと相成りました。
案の定、ものすごく濃い内容です。東方書院発行の月刊誌『東方』に連載した文章を中心にまとめた300ページほどの本ですが、今村先生の博覧強記振りに、改めて驚かないではいられません。
いや、博覧強記などというと失礼に当るかもしれません。先生は「あとがき」の5ページにわたって参考文献を挙げ、このほか本文中に使用した文献367部について、別に索引を作って出典を明らかにしています。一昨年出版した拙著『琳派 響きあう美』のことを思うと、忸怩たるものがありますが、今さらどうしようもありません。
それはともかく、『猫談義』を送ってくださった岩滝さんは、本当に本が好きな本屋さんらしく、この本についての長い紹介文をみずから書いて同封してくれました。これまでネットでずいぶん本を買いましたが、こんなオタク本屋さん――いや、愛書家本屋さんははじめてです。
心を深く動かされた僕は、アマゾンの質問機能を使って、お礼メールを送りました。すぐに返メールが来たのですが、それによると、岩滝さんは美術にも興味をお持ちになっているとのこと、とてもうれしい気持ちになったことでした。
これから時々、この『猫談義』からおもしろいネコの詩や話を紹介していくことにしたいのですが、まず初めは、やはりこれまで何度も「K11111のブログ」に登場してもらっている陸游です。
今村先生は、第一章の「縁起」を陸游の「十一月四日風雨大作」(『剣南詩集』巻26)で締めくくっています。もちろん先生は、原文と読み下しに現代語訳を添えて完璧を期しているのですが、このブログではいつものように戯訳で紹介することにしましょう。
ちなみに、陸游のネコ詩を全部知りたくて、『陸游集』全5冊を買っちゃったことはすでにアップしたとおりですが、これは1976年の中華書局版です。実はこれと同じ『陸游集』を先生も使っています。先生は必ず出典をちゃんと書いてくれるので、こんなことまで分かっちゃうのです。
風吹き荒れる川と湖[うみ] 雨が降ってて村暗く
周りの峰々山鳴りし 逆巻く波涛は吠えまくる
柴がチョロチョロ燃える部屋 粗末な毛氈[もうせん]――でも温[ぬく]い
俺はメロメロ・ネコチャンと 門 出ず家に閉じこもる
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