つまり杉本さんは脳細胞を働かせて、「ジオラマ」シリーズをこねくり出したわけじゃなかったのです。実のなかに虚を見てしまうという性癖を、杉本さんは生まれつき有していたんです。それが頭でっかちの現代写真と、一線を画す決定的理由でしょう。
杉本さんは「離人症」だといっていますが、これは『広辞苑』にも載っている言葉です。人格感喪失とも有感情喪失ともいわれる精神状態を指しています。しかしそこに、近松門左衛門以来のDNAが作用していたと見ることも不可能ではないでしょう。このような僕の「ジオラマ」分析は結構正鵠を射ているんじゃないかなと思って「劇場」の章を読むと、杉本さんは最後をつぎのように〆ています。

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