2025年9月4日木曜日

東京国立博物館「江戸☆大奥」6

先に「リアリズム」といいましたが、キャプションによると、実際とは異なる描写も含まれているそうです。例えば、17日に鏡餅を下男が曳き歩く「鏡餅曳」を大奥の女性たちが見物していますが、これはフェイクで実際は見物などしなかったそうです。また正月の「追羽根」では女性たちがこれに遊び興じていますが、大奥で羽根をつくことはなかったらしいのです。しかし楊洲周延は――というより版元の福田初次郎は、商売上どうしてもこれらを入れたかったのでしょう。

刊行されたのは明治27(1894)から翌々年にかけてでしたが、ちょうど日清戦争と重なっていることがとても興味深く思われました。明治のはじめは欧化思想全盛の時代でしたが、10年代に入るとそれへの反省が徐々に起こって、古き歴史を誇る大日本が強く意識されるようになりました。

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東京国立博物館「江戸☆大奥」7

  そして明治 20 年代を迎えると、早くも富国強兵による近代化に成功した自国に、多くの国民が自信と矜持を抱くようになりました。それと日清戦争がまったく無関係であるはずはありません。 そうなると旧弊としてあれほど否定したはずの江戸時代を、誇るべき歴史の 1 ページとしてながめ...