そして明治20年代を迎えると、早くも富国強兵による近代化に成功した自国に、多くの国民が自信と矜持を抱くようになりました。それと日清戦争がまったく無関係であるはずはありません。
そうなると旧弊としてあれほど否定したはずの江戸時代を、誇るべき歴史の1ページとしてながめる余裕ができてきたのです。あるいは江戸時代のことをよく覚えている人の方が圧倒的に多かったわけですから、西欧合理主義的な近代以前の古きよき時代に対する郷愁やノスタルジーも、余裕とともに生まれやすかったでしょう。楊洲周延の「千代田の大奥」は、そのような時代風潮のなかから誕生した一大絵巻だったのではないでしょうか。
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