2025年10月4日土曜日

サントリー美術館「絵金」21

 四世鶴屋南北が創り出したという「生世話狂言」の世界とは、まさに絵金が芝居絵屏風に視覚化したところではないでしょうか。そのせいでしょう、絵金の作品はみずからが中央に滞在した間に、吸収した歌舞伎的感覚を土佐において展開させたものであると考えられてきました。この場合の「中央」とは、18歳から3年間経験した江戸であり、その後一時期逃げるようにして身を潜めていたという上方かみがた(京大坂)のことです。

ところが今回の絵金展カタログには、あべのハルカス美術館・藤村忠範さんの「『幕末土佐の天才絵師 絵金』展によせて」という巻頭言と、「土佐における江戸末から明治初期の地芝居の状況について――絵金の芝居絵屏風の流行が成立した時代背景を探る――」という興味深い論文が載っているんです。とくに後者は、2編の資料をも加えた貴重な論考です。

 

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