2025年5月28日水曜日

東京国立博物館「蔦屋重三郎」8

 

有名な「世の中に蚊ほどうるさきものはなしぶんぶぶんぶと夜も寝られず」という落書は、もちろん詠み人知らずでしたが、こちらの「落書」序文には「寿亭主人 春町」と作者の名が堂々と刻されているんです。草双紙に一大画期をもたらした黄表紙『金々先生栄花夢』に感じられるロマンチスト恋川春町は、同じノリで『鸚鵡返文武二道』も書いちゃったのでしょうか。そんなことはないはずです。

この段階では、まず武士であった恋川春町に松平定信の厳しい眼が向けられ、吉原生まれの町人・蔦屋重三郎までは及ばなかったのでしょう。しかし2年後には蔦重も身代半減という処罰を受けるのですが、その理由は一般にいわれる山東京伝作洒落本3作だけでなく、『鸚鵡返文武二道』も含まれていたのではないかと疑われるほど、過激な内容だったように思います。


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根津美術館「唐絵」6

また島田先生は、「題辞、題詩が単に画図をみた印象、感想を述べるだけでなく、画図の主題と密接な関連があって、 画図の十分な理解のためにはその詩文の解釈が欠かせないとか、題跋の加わることが予期されるというような条件をおくことが必要であろう」と指摘しています。 さらに島田先生は、詩画軸...