円空彫刻を日本彫刻史のなかに解き放てば、正面性フロンタリティを重視する伝統をよく継承しているともいえるでしょう。正面性とは、正面から見たときもっともすぐれた効果を発揮するように志向する造形意欲です。円空は円い木材を二つ割りにし、あるいはそれをさらに二つに割って用いましたから、おのずから正面性が強まったのです。
それをもっともよく現わすのは、カタログの表紙にも選ばれた代表作「両面宿儺りょうめんすくな坐像」(千光寺蔵)でしょう。両面宿儺は大和朝廷に反旗をひるがえした飛騨の豪族で、やがて滅ぼされてしまうのですが、一つの体に互いに背を向けている二つの顔をもっていたと伝えられています。しかし飛騨地方では、ここを守護していた豪族と伝承されてきました。飛騨地方ではもうほとんど神様だったのでしょう。
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