2025年3月19日水曜日

三井記念美術館「円空仏」7

つまり円空仏は、いや、円空彫刻はきわめて神仏習合的だったんです。それは日本仏教のきわめて大きな宗教的特徴でした。その意味で円空彫刻は、異端でもなく、破格でもなく、ましてや前衛的でもなく、とても日本的な宗教彫刻だったのです。

日本仏教彫刻史の本流を形作ってきたとされる仏像は、基本的に中国仏教彫刻を学び、それを日本化した様式にしたがって造形されてきました。最も日本的仏像とされる定朝様式も例外ではありません。チョッと意地の悪い言い方をすると、中国仏教彫刻の模造、この場合なら模像だったんです。

これに対して、円空彫刻は純然たる日本の宗教彫刻でした。縄文時代の土偶が放つエネルギーや、古墳時代の埴輪がたたえる微笑やユーモアと円空彫刻が、かすかとはいえ美しい共鳴を起こしているのは、不思議でも何でもありません。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』2

 本邦初の辞典がここに誕生したんです。しかも日本語のあとに、すぐれた英訳がついているから便利です。便利なだけじゃ~ありません。日本語と英語における視覚文化へのアプローチが意外に異なっていることが浮彫りになり、おのずとわが国視覚文化の特質といった問題へ導かれることになります。この質...