円空は大木を二つに割り、その丸い方を前面にして「両面宿儺坐像」これを彫り出したようですから、互いに背を向ける二つの顔をそのまま造形化することは不可能でした。円空は後ろを向いていたはずの顔を、主となる顔の左脇(向って右側)にやや斜めを向かせて彫ってしまったのです。それは素材のもつ特性を積極的に生かした造形でしたが、これによってきわめてすぐれた正面性が誕生したのです。
ところで仏像を鑑賞したり調査したりする際、仏像専門家は正面からだけではなく、必ず横やうしろに回ってそのボリューム感や安定感を見ようとします。しかし円空彫刻においては、それをやってみてもほとんど無意味でしょう。あくまで円空彫刻は、正面から拝む神仏のお像なのです。
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