嵯峨天皇「内史貞主が『秋月歌』に和す」
空は秋の気 月光が 射し込んで来る静かな夜
すだれを半ば巻き上げりゃ 満ちた月の輪 眼前に……
取りすがろうと手を上げて みたって誰もできゃしない
襟を開いて月影つきかげを 入れても胸まで届かない
雲がかかって天空に 清き光はわずかだが
風が雲 吹き払うとき 明らけくなる――見てる間に
大きな秦しんの鏡のよう 山ぎわ離れ昇ってく
色は楚国の白き絹 夜も白むかと錯覚す
どんなに月が欠けてても やがて満ちてく十五夜に……
この世の人はみな友だ 一つの月の下に居りゃ
月光――秋に捨てられた 班女はんにょの白き扇のよう
明月――かつて阮籍げんせきの 帷とばり照らしたのと同じ
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