2021年12月22日水曜日

根津美術館「鈴木其一・夏秋渓流図屛風」8

 

すると、閻浮檀金[えんぶだごん]でできた小さな聖観音の立像を引き上げたんです。閻浮檀金というのは、インドの閻浮樹が茂る森林を流れる河から採れるという砂金で、もっとも高貴とされている金のことです。やがてこの兄弟に、自宅を聖観音のための寺に変えた戸長の土師直中知[はじのあたえなかとも]を加えた三人が、浅草観音の草創者として崇拝されるようになったというのです。

この三人が土地の氏神様として、寺の東脇にまつられたのが浅草神社です。この三社大権現の祭礼である三社祭りを知らない日本人はいないでしょう。僕も友人の和田泰昌さんのお招きで、一杯やりながら堪能したことがあります。「檜前」は「檜隈」と書かれることもありますが、いずれにせよ、檜は浅草寺にゆかりの深い樹木だったのです。

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