東洋画には、指墨とか指頭画とかいって、指や手のひらや爪に墨をつけて描く技法があります。今回コローも相似た技法を使っていたことを確認することができて、とてもうれしくなったんです。もっとも、ルネッサンス・ヴェネツィア派最大の画家ヴェチェルリオ・ティツィアーノが指頭技法を用いていたことは、辻茂先生の世界美術全集8『ティツィアーノ』(集英社 1978年)を読んで知っていました。
ティツィアーノに学んだパルマ・イル・ジョーヴァネが、師の技法を伝えているそうです。それによれば、ティツィアーノは最終的な仕上げの段階に達すると、指でハイライトから中間色へぼかすことや、人物を生き生きとさせるため、指で少しアクセントをつけることを行なっていたんです。その段階では、筆よりも指で描かれることの方が多かったというのです。
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