2021年11月7日日曜日

三菱一号館美術館「印象派」3

 

もちろん、玄関に合うからといって「僕の一点」に選んだわけじゃ~ありません。理由はその表現技法にあります。釣り人の背中にちょっとホワイトが加えられているのですが、それが夕日の反射を的確に現わしていて、とても効果的なポイントになっています。

しかしそのホワイトをよく見ると、筆触がほとんど感じられないのです。僕は「これだっ!!」と思いました。というのは、2012年秋、江戸東京博物館で見た特別展「維新の洋画家 川村清雄」のカタログ解説を思い出したからです。それによると、川村清雄はパリ留学時代に、晩年のコローをアトリエに訪ねたことがありました。そのときコローが、木の葉の描写に筆を使わず、親指に絵の具をつけて描いていたことや、アイボリーブラックを好んで使っていたことを語っているそうです。

「魚を運ぶ釣り人」に見られる背中のホワイトは、コローが最後に指先で加えたものに違いないと思ったんです。

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