2020年10月16日金曜日

葛飾北斎『万物絵本大全図』大英博物館蔵5


 これでは60歳代、作品が減少傾向にあったこともうなずけます。もちろん北斎のことですから、『北斎漫画』などの絵手本や絵本、『多満佳津良』などの艶本、さらに摺物を矢継ぎ早に発表していますが、50歳代の読本挿絵期、70歳代の錦絵期に比べると、この時期を象徴する作品があまり見つからないように思います。

そのような60歳代と70歳代の接点ともいうべき文政12年に、『万物絵本大全図』は描かれたのでした。この作品の内容と意義は、書名がすべてを物語っています。つまり、これまで描いてきた膨大な量を誇る絵手本の集大成なのです。それは絵手本制作に一応のケリをつけて、いよいよ錦絵時代へスタートを切るのだという、北斎みずからの決意表明のようにも感じられてなりません。

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