2020年8月1日土曜日

山本勉さんの愛猫・ルリちゃんへ9



最後に、また今村与志雄さんの『猫談義』から、元好問の七言絶句「仙猫」を、マイ戯訳でルリちゃんに捧げることにしましょう。元好問は中国・金の詩人です。松枝茂夫編『中国名詩選』(岩波文庫)の解説には、
内郷・南陽などの県令を歴任し、尚書省左司都事に至った。やがて金の滅亡にあい、乱離の中を放浪すること20年に近く、ついに元に仕えず、もっぱら金代の史料編纂に従事した。金・元の際の最大の詩人で、悲壮なその詩と生涯は、しばしば杜甫に比せられる。
とありますが、「仙猫」みたいな軽妙きわまる詩も、じつにいいじゃ~ありませんか。
 仙猫の声 天壇の 祠[ほこら]の中から聞こえくる
  そこで息子に言ったのさ 「どうしてなのか聞いてごらん」
  「燕仙人[えんせんにん]の仙薬を 貴殿[あなた]も一緒になめたのに
  なぜニワトリやイヌたちと 行かなかったの 仙界へ?」

0 件のコメント:

コメントを投稿

太田記念美術館「鰭崎英朋」4

 もう一つ英朋で忘れられないのは、その筆になる「蚊帳の前の幽霊」です。若いころつとめていた東京国立文化財研究所の近くに、三遊亭円朝の幽霊画コレクションで有名な全生庵がありました。毎年お盆のころ、全生庵で陳列公開されるこの幽霊画を見に行き、谷中のお蕎麦屋さんでお昼を取ってまた研究所...