後期高齢者であることを忘れて、僕が選ぶ№1は、「元旦」と同じく七言絶句の「夜直」です。夜直は宮中で宿直すること、王安石が都の汴京(現在の開封)にいたときの詩ですが、いつの作かは分からないそうです。
僕が東京国立文化財研究所につとめていたころ、セコムだったか、アルソックだったか、ともかくも警備会社が入るまで宿直がありました。大晦日に当たったときは、紅白歌合戦を見ながら独り酒、元旦に当たったときはヤケ酒(!?)――今では懐かしい思い出です。しかし、さすが王安石はすごい! 僕と違ってお酒なんか一滴も飲まず、こんな素晴らしい詩を吟じてしまうんです!! 「オマエと天下の王安石を比べたりするな!!!」
金の炉に香 燃え尽くも 時報の太鼓にゃ余韻あり
波打つ微風 闇に乗り 吹くたび春寒つのりたり
だが春の気配なまめいて 眠ることさえ出来ぬ俺
傾く月に花の影 欄干[おばしま]までもせり上がる
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