2017年8月17日木曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」20<伝狩野元信 猿曳棚>2




このような形式の棚はふつう紹鴎棚と呼ばれています。描かれる猿曳の絵は、狩野元信の筆であると伝えられてきました。間もなく、サントリー美術館で本邦初の「狩野元信展」が開かれますので、このマイスターに改めて注目が集まることでしょう。「猿曳棚」の絵が本当に元信かどうか分かりませんが、元信の時代か、まだ元信工房があった時代に作られたものであることは確かでしょう。

静嘉堂文庫美術館には、この棚の写しが2点所蔵されていますが、そのうちの1点は、幕末明治に活躍した狩野派絵師にして日本画家の狩野永悳[えいとく]が描いています。永悳は元信筆という伝称を知って、緊張しながら写したにちがいありません。このほか、仙台藩御用絵師・菊田伊洲のいとこに当たる菊田伊徳という画家が幕末期にこの猿曳図をコピーした作品も遺っているそうで、大変人気のあった棚であったことが推測されます。

これをお正月の茶会に用いれば、招かれた客の心にいつまでも残る、すばらしい一席となることでしょう。猿曳はお正月の風物であり、季語だからです。愛用する『基本季語五〇〇選』にはこの項目がなかったので、ネットで検索すると、松尾芭蕉に「猿引は猿の小袖を砧[きぬた]哉」という一句がヒットしました。さすが芭蕉です。

しかし僕的には、『江戸川柳辞典』に載る「おぶさったやつが養う猿廻し」の方が、おしゃべりトークで使えそうな気がするのですが!?

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