2017年7月24日月曜日

静嘉堂「曜変天目」諸説6



その後、京都大学の岡田温司[あつし]さんから、『虹の西洋美術史樹脂』<ちくまプリマー新書>をいただきました。これまたオススメ本ですが、曜変虹蜺邪淫説の観点からとくに興味深いのは、第4章「女王の虹――権力の象徴」のなかの「虹と蛇」です。宮廷肖像画家アイザック・オリヴァーがエリザベス一世を描いた「虹の肖像」を取り上げて、虹および蛇の両義性を分析しているからです。

岡田さんによると、古今東西のさまざまな神話が物語っているように、古くから蛇(龍)は虹とも密接な関係を保ってきました。たとえば、オーストラリアの先住民アボリジニは、虹と蛇の合体した図像――「虹蛇」<レインボーサーペント>を、先史時代からずっと受け継いできたそうです。

この図像は、雨や水と結びついて、自然のもつ創造的かつ破壊的な力を象徴しています。虹も幸福のシンボルですが、同時に不吉なものともなりえます。このような自然の両義的な力が、水とのかかわりが深い虹と蛇の両方に投影され、合体したのだというのが岡田さんの指摘です。

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